2015.10.10 リバース


評価 4.5

実は途中までかなり飽きていたのだった。
古川(高校時代の広沢の友人)にしても、深瀬(大学時代の広沢の友人)にしても、もう辟易と言った感じの男だった。
なんでこんなに自分を卑下できるんだろう。
そこが作者の意図だったとしたらまんまと術中にはまったと言うことなのだろうが。

大学時代に仲の良かった5人組の若者。
旅行中にこの中の一人広沢という大柄な男が遅れて来た友人を車で迎えに行って事故を起こし亡くなってしまう。
残された若者達はその後就職するのだが、その職場に、恋人に、車に、お前は人殺しだという告発文が送られる。
若者達の隠していた過去、とは何だったのだろう。
そして誰がこの怪文書を送っているのか。


コーヒー好きの深瀬が何も人生に見出せない中、唯一大学時代の友達と思っていたのが広沢であった。
彼は広沢に憧れ、誰も差別しないおおらかな気持ちに包まれ、友情を育んでいた、それまでの高校時代までのいけてない自分を払拭するように。
地味な深瀬にはじめて美しい恋人が出来る、それはコーヒー店での出会いから始まり、美穂子と言う女性だった。
ところが彼女に告発文がきたので、その日の広沢の出来事を全て語りだす・・・・
そして同じような告発文が来たほかの友人達の出来事を確かめ(一人は電車を待っているホームで突き飛ばされそうになっている)、広沢と言う人間を改めて知るために彼の故郷に行くのだった。

殺された人間の過去を知りに昔の人をめぐっていく。
これってミステリに良くある、そして深瀬は知らない広沢をどんどん知っていく。
この過程が面白いかと聞かれると、微妙になんだか私の心をはずしている。

そもそも、実際に手をかけて広沢を殺していないわけで、あれは事故だったわけだ。隠している事実はあるにせよ、そしてそれは遺族の感情は逆なでするかもしれないけれど、強制したものでもない。
不可抗力ともいえることなので、そこがものすごく最初からすっきりしない。
だからいくら過去の広沢を知っていっても、なんだか、なのだ。
更に広沢の正義感もわかったし彼の性格も徐々にわかるのだが、なんで海外にいきなり卒業後行きたかったのだろう?
なんで誰にも話していなかったのだろう?恋人以外には。
恋人がいるのを何で深瀬にも誰にも話していないのだろう?
深瀬が特別の友人だったら(と恋人には言っていたらしい)尚更だ。

深瀬も(あとで出てくる古川像も)よくわからない。
これは依存なのか?
友達が初めて大学で出来て、そのことを嬉しがっているのはわかるが、こういう感じの男っているんだろうか?

・・・・
と、色々不満は多かったのだが。

ラスト!
私はものすごく驚いた、こういう展開か!
最後のページで驚愕した。
これだけでも読んで良かったと思った。

でも一方で(以下ネタバレに続く)

ネタバレ
・広沢が蕎麦アレルギーだと言うのも誰も知らない。
だから友達同士で蕎麦屋に行ったときにも一人でカレーを食べていた。

そしてラスト、お気に入りのコーヒー店で、深瀬が味わった蜂蜜は、旅行の時と同じ味の蜂蜜だった。
彼は「好意で」、ちょっとだけビールを飲んでしまって飲酒運転で死亡した(と思われている)広沢に、「蜂蜜をたっぷり入れたコーヒー」を渡しているのだ。

その蜂蜜は蕎麦蜂蜜。
だからアレルギーを起こしたのだった、広沢は。
そのことに気付いて自分がまさに広沢を殺したのだ、と深瀬は自覚するのだった。

・・・
ここ非常に面白いが、蕎麦アレルギーの症状って、人によって違うので、広沢がひどい蕎麦アレルギーでどうしようもなくなる、呼吸困難ぐらいになる、というのを最後の方の美穂の証言に入れた方がいいと思った。
蕎麦アレルギーを読者が全員知っているわけではないし。