評価 5

あああ・・・・・こういう風なはじまりだったのか。
実に惜しい、自分が。
その女アレックスを読んでいるので、ラストが見ているからだ。
刻一刻とその時間に近づいて行っているのがわかってしまうからだ。
もしこれが読んでいなかったら、更にこの点のどきどき度が違っていただろう。
そう思うと、惜しくてたまらない。

その女アレックスを読んでいる時には、こういう出来事があったとはありそれによってカミーユが絶望しているというのは理解できた。
でもどういう感じで彼女が微笑みかけどういう風にカミーユが彼女を一人にして後悔して、どういう風にカミーユが全身全霊をこめて彼女を愛していたかというのがまだ見えてなかった。
この第一弾を読んで、このあたりがすっきりとわかったのだ、どれだけの絶望をカミーユが抱えていたのかということもまた。

・・・・
出てくる登場人物もその女アレックスでおなじみ(逆だけど順番は)なので、とても入りやすい。
大富豪でおしゃれなルイ、
誰からも彼からもタバコをせびるせこいアルマン、
など懐かしくてたまらなかった。
あ、また会えたね!と言う気持ちもした。

このミステリは、非常に残虐なシーンが多い。
血に溢れていると言ってもいいだろう。
しかもその殺し方が尋常ではない殺し方だ。
犯人も誰だ、なのだが、なぜこのような殺す方法をとっているのだろう。
同じような事件が続き、過去の事件にもさかのぼりようやくカミーユ達は一つの事実に気付く。
それがなぜ犯人がこの殺し方をしたのかと言うのにも繫がるのだが・・・・
この残虐シーンがやや、辛い、読んでいて。
これでもかこれでもか、と微に入り細に入り語ってくれるので、免疫がないとここでかなり辛いと思う。

途中、カミーユの奥さんのイレーヌが妊娠して喜びの絶頂にいる夫婦の姿が出てきてここはまた微笑ましい(同時に悲しい)。
ルイのおしゃれっぷりも楽しいし(余裕がある姿も悪くない)、アルマンが隙あらば誰からか何かをせしめていく姿も、これはその女アレックスで彼がなんのために倹約しているのかというのがわかっているだけにぐっとくる。
また途中途中でいらっとさせられるのは(これも作者が意図しているのだろうが)、執拗に追ってくるル・マタンの新聞記者ビュイッソンが次々とカミーユの裏をかき、すっぱぬいていくことなのだ、事実を。
いい迷惑だろう、秘匿事項がある警察から見れば。
またミステリ通の書店主というのも登場して、カミーユたちの捜査に協力する。
協力していく過程で、彼もまた犯人候補の中の一人として上げられていくのだ、精神状態の危うい妹が出てきたり、書店主がどうしても言いたくなかったアイルランドでの出来事がなんだったのかというのが明らかになっていくところもまた読ませた。
なぜこの殺し方をしたか、というのを探っている部分も推理小説読みだったらとても楽しい部分だと思う。
しかしこの話、バランスをちょっとみると、一部が異常に大きく、二部が後半少ないと言うアンバランスな形になっている。
なぜ?と私は思っていた。
そして、二部に入って、ある違和感があり、そしてその違和感が頂点に達した時・・・・
あああ・・・!
こういうことだったのか!!!
脱帽。

以下ネタバレ
・犯人は新聞記者ビュイッソン。
浪費家のマレヴァルと通じていた。
そこから全てが漏れていた(しかしこれに対しては、これだけ情報漏えいしているのだから、もっと前に身内が漏らしているのではないか、と疑わなかったのかというのが疑問)

・女性を殺していく方法は、かつて出版された推理小説を模倣している。
それは、ある時には、ブラックダリアであり、ある時にはアメリカンサイコであり、ある時には、本人がかつて書いた名も知らぬ推理小説であったりする。

・このミステリの最大の仕掛けは、
一部が、実はビュイッソンの小説であったこと(つまり小説内小説であった)。
一部で起こったことは本当のことだが、たまに人物をビュイッソンがプラスしたりしている。
それだけ通じていたと言うことだ、カミーユたちのやり取りなどに。
そして二部が本当のカミーユたちで、
私が違和感を覚えたのは、一部でマレヴァルの犯罪を知っていたはずの人が二部で驚いていたこと。
あれ?と思った。

・カミーユの妻イレーヌは結局子供も彼女も殺されてしまう。