2015.11.23 欺きの家



評価 5

久々のゴダード!(私にとってだが)
三つの時代が交錯していて、過去が現在に及ぶ何物かを見つめる、そしてきらめくような青春の恋愛、と舞台も話も美しすぎてくらっとした。
プロット的にも、何が起こっているのかが全くわからない状態でこれだけ進めていく技、のようなものを感じた。

自分の勤めている企業の社史を作る、ということで、定年退職直前のケラウェイは頼まれる、トップじきじきに。
そして、ある年代の書類一式が企業の保管庫から抜けていることがわかる。
そこから始まって、大学生の頃、一人の少年オリヴァーと出会い、彼の姉ヴィヴィアンに引き合わせるので協力して欲しいと言われ、オリヴァーの手伝いをする、何のことやらわからずに・・・



特に、カプリ島場面が陽光溢れていて本当に美しい。
美女ヴィヴィアンに憧れて憧れてあまりの美しさに倒れそうになりながら、縁がないもの、と思っていたのに、美女の弟のオリヴァーの手助けをしているうちに、ヴィヴィアンと心を通わせることが出来るようになったケラウェイの有頂天な姿がいじらしい。
そして現在の地手では彼は既に定年退職目前の男になっている。
しかし彼の過去にあったある出来事がいまだに彼を追いかけてくる・・・

・・・・・・・
今日の推理小説のように、ばたばたと物事は進まない。
ゴダード時間とも言うべきゆったりとした謎が展開され、ゆったりと物事は進んでいく。
だからここが歯痒いとか、もっとさくさく進めとか、の人には合わないんだろうと思う。
しかも、何が起こっているのか、主人公のケラウェイもだが、読者もぼんやりと形作られているが一体何が問題で何がどうしてこうなったのか、と言う全体像が見えてくるのがかなり後の方だ。
結末のところまで何が起こっているのかは、ぼんやりとしか見えてこない。
でもこのゆったり具合の進み方が、心地良かった。

一瞬のきらめきのカプリ島での出来事、そして暗転。
人生を左右させるようなある出来事が一瞬にして起こり、そしてその意味が何十年もしてからふたを開く、という構造が非常に面白く感じた。

過去の美しさがあるだけに、ヴィヴィアンの今の姿が痛々しい。
まさかここまで転落するとは・・・・
またオリヴァーがしていたことが最後の方で明らかになる、そこでオリヴァーの衝撃というのがわかるのだった。
折々にケラウェイの過去が出てきてどのような経緯で今の会社に勤めるようになったか、どのような経緯でヴィヴィアンと別れることになったのかというのがわかってくる。
今、というのがわかっているだけに、過去の姿が青春だなあ・・・と思うし、ここからこの人はこういう人生を歩んでいくのか、と感慨深い。

次々にこれだけ人が死んで、話としても決して明るくはない話。
それなのにラスト、強烈な一筋の光が見えたような気がした。
ある人の名前を思い切り呼んでみたい気がした。

・・・・・・・・・・・・・
人物相関図が上巻に出ているが、再婚結婚含めかなり複雑なので、これを下巻にもつけて欲しかった。
(登場人物表はついているものの)
あと現在の人物相関図も作って欲しかった。

以下ネタバレ
・自分のためにグレヴィル・ラシュディが画策した、というのは割合見えてくる、初期のうちに。
更に、前社長ジョージ・レン(オリヴァーとヴィヴィアンの父)が死んだのが、自殺ではないというのも、それを疑ってオリヴァーが探している証拠を、というのも見えてくる、丹念に読んでいれば。
が!
まさか、ジョージ・レンとフランシスがゲイ同士の関係を持っていたというのは全くわからなかった。
だから、オリヴァーはあのフランシスの石を、ケラウェイに残したのか!

・この中でフランシスと結婚した元オペラ歌手のルイーザが親友のコヴェッリ伯爵夫人の夫を密告した、という重要な情報をケラウェイが伯爵夫人に伝える役割を持つ。
この伯爵夫人の姿が非常に好ましい、年輩の女性で酸いも甘いもわかった人物として目立たないが重要な位置を占めている。