評価 5

あーなんて面白いんだろう!
葉村晶シリーズで一番楽しく読めたかもしれない。
そして葉村も年をとっている・・・もう40歳を過ぎたか・・・と感慨深い。

このミステリ、文庫でこのお値段でお値段以上、と言ってもいい。
ミステリのいい部分がこれでもかとぎゅぎゅっと詰まっているのだ。
プラス、ビブリオマニア的な楽しい部分もある。
それは、主人公の葉村晶が古書店に勤めるといういきさつがあり、古書店での本の特集(翻訳ミステリ好き(国内も)にはたまらないこのラインナップ)の話や、途中に出てくるやっぱりミステリ好きの舞美と葉村晶(珍しくこの部分で冷静な葉村が明るく生き生きとしている!)とのミステリ談義などが読ませる。
そしてラストの部分に、きちんとミステリのフェア作品の店主からの解説という形式をとりながら、本のラインナップがあるところも遊び心に溢れている(しかも作者の夫の小山正さんの執筆協力と言う豪華さが!)
一粒で何粒感もあるミステリ小説だと言えよう。

・・・・・・・・・・・
話そのものも面白い。

過去の有名女優芦原吹雪と入院した病院で知り合った葉村晶。
吹雪は、死ぬ直前であったが、20年前に失踪した自分の娘志緒利と再会したい、と言う夢を葉村に語る。
志緒利とは、吹雪が女優時代に父親のわからない私生児として生んだ子供だった・・・
お見合い当日、それをすっぽかして突然の失踪、志緒利はどこに行ったのだろうか。
更に、なぜ失踪したのだろうか。


吹雪の娘の捜索、が最初にあり、そこから派生していくさまざまの事件がとても心惹かれる。
最初に娘をそもそも探していた探偵もまた失踪していてその妻はずうっと彼の帰りを待っている。
また娘志緒利の友人の矢中ユカとの接触で、新たな一面が出てくる。
加えて、どうしても触れざるを得ない、吹雪の相手は誰だったのか、という謎も横たわっている。

葉村が働いている古本屋で途中で会った舞美と言う同世代の女性がいる。
彼女を自分のシェアハウスに呼び入れていく葉村、はまた新たな展開を招いているのだ自ら。

・・
何度も何度も叩くのめされ(精神的にもだが肉体的に)、病院に入る葉村晶の壮絶な姿がなんとも痛々しい。
それでもカタルシスがそれぞれの物語にあるので思わず一気に読んでしまうのだった。

以下ネタバレ
・志緒利は冒頭から(葉村が病院にいた時にいる)目の前にいた。
太った女性、そして吹雪の秘書で代議士の大門の金庫番であった山本の妹の名前で精神病院に入院していた。
緩和していったので何度か退院している。

絞殺の手口で周りの人を殺していたのはこの人だ。
彼女の心の傷になったのは、母の友人の俳優安斎喬太郎に18歳の時にレイプされ、更に暴行を受け背中に跡の消えないタバコを押し付けられたこと。これを友人のユカのみが知っていた。

・舞美はサイコパスであって、葉村に取り入り、シェアハウスのオーナーの家をのっとろうとしていた(遺産も)

・帰りを待ち続けていた元刑事の探偵岩郷は、600万円を手にしたことから(真相に近づき山本から口止め料としてお金をもらう)、息子に殺されていた。