2015.12.23 孤狼の血


評価 4.9

私がもっとも苦手とするやくざ物でハードボイルドだ。
しかも、旧弊なおいこら先輩が出てくる警官物だ。
ああ・・・どこまで読み続けられるだろう・・・と思っていたが、これがつるつると読んでしまって、しかもラスト感動してしまったのだった。
漢(おとこ)の物語。

とても大きいのは、これが昭和の終わりと言う時点のミステリだということだ。
まだ終わりと誰も認識していないが、ちょうど境目の昭和63年時点。
だから、
パソコンもそれほど使ってなく紙にまみれている、つまりは書類にまみれている。
もっと言えるのは、携帯電話がないのだ、警察官には多分必須のアイテムだろうが、これがなく、ポケベルと言う懐かしい懐かしい道具に頼っている。
昭和ということでなんとなく全体ももっさりしていて、垢抜けない。
ぴぴっとパソコンでいっちょあがり、みたいのもないし、GPS機能でぱぱっとというのもない。
地道に(今でも勿論そういう部分はあるのだろうが)張り込みをし、地道に人に会いに行き、地道に公衆電話をかけていく、そんな時代なのだ。
この時代だからこその輝きが物語に華を添えている。

昭和63年の広島で所轄署の捜査二課に新人の日岡秀一が配属された。
彼は広島大を出ていながらキャリアではないという異色の経歴の男だ。
彼が配属されたのは、ヤクザとの癒着を噂される大上刑事だった。

暴力団系列の金融会社社員が失踪した事件の捜査を担当することになった。
違法行為をしながらやくざを締め上げていく大上。
大上のやり方に疑問を持ちながらも、日岡は大上の下で成長していく・・・


大上の前近代的ともいえるやり方が、やくざには通用していく。
それを目の当たりにして、違法じゃないか違法であるかというやり取りが空しくなってくる気持ちもわかる。
実際問題解決しているのは大上なわけだから。

・・・・
このミステリ、それぞれの章の冒頭に文章が書いてあって、削除と言うのがある。
この意味が本当のラストのラストまでわからない。
途中、(ああ・・・これはこれを書いているのね)というところまではわかる。
でもそのあとの削除の意味がわからない。
その削除の意味がわかった時に、なんだか涙腺を刺激されたのだ。
こういうことだったのか!!!
最後の年表も胸に突き刺さる。

人との関わりを重んじる大上の姿が焼きついて離れない。
その強烈なキャラクターを受け入れるまで時間は掛かるのだが、あるところで決壊したように彼の心がずうんと伝わってくるのだ。
ジッポのライターとともに。

以下ネタバレ
大上はやくざ抗争を収めるべく動くのだが、最後死んでしまう。
事故死として片付けられてしまうのだが・・・・

・日岡は大上が持っていた警察内部の腐敗状況のノートを受け継ぐ。
大上は資金をまた集めていてそれは内部密通者からの情報とかに使っていて、自分のために使っていたわけではなかった。

・日岡を子供のように可愛がってくれた大上。
しかし実は日岡は、元上司から大上を見張れといわれたいわばスパイであった。
大上の動向を記したノートを書いていたのだが、最後提出する前に必要なところを墨で消す。
そして大上のあとを継ぐという決心をしたのだった。

・大上はおそらく日岡を自分を探るために入れた犬だったと認識していた。
認識しながら、彼を信頼していたのだった。