2016.01.18 キャロル


評価 5

ハイスミスよ・・・・
これはミステリではないけれど、息詰まる恋愛小説で、人間が織り成すドラマ、とも言えるだろう。
そしてそのドラマは実に小さなことから始まるのだということも身にしみて感じたのだった・・・・

愛の形、というのが今ほど多様化されていないこの時代。
また同性愛と言うのが全く認められていなかったこの時代。
二人の女性が出会い、しかも一人は既婚で子供がいて、もう一人は独身だが彼がいてという状況下で二人が一気に惹かれあう・・・

クリスマス商戦の真っ只中、デパートでパートをしていたテレーズは輝くばかりの美しい女性キャロルと出会った。
恋人もいるテレーズは自分の心の動きがわからない。
そしてキャロルと車で旅に出るのだった・・・・


日本だとこの主題は中山可穂とかになるのだろうが、なんと違うことか。
どちらがいい悪いではなく、ただただ違うなあ・・・と読みながら思っていた。
この本の女性達、愛に悩みはする、するけれど、語り合っている。
阿吽の呼吸でわかりあうひりひりとした痛み、のような日本の同性愛、と、阿吽も何も語りましょう、相手がどう思っているか常に知りたいのであなたはこう思ったの?という問いかけとか気持ちが常にあるかの国の同性愛。
最初の方で、テレーズは自分の気持ちにすら気付いていない、時代が違うとはいえ。
ぼんやり思っているのだが、恋人に指摘されてはじめてそうなのかもと認識する感じだ。
このあたりが19歳とまだまだ幼いテレーズの姿が見て取れる。

好きなキャロルは既婚者で夫とは離婚寸前のものの、何よりも大切にしている子供がいて、子供を一番に考えるキャロルの姿に一方で納得しながらも、また別の一方で軽く嫉妬を覚えるテレーズ。
自分と子供をどちらをとるのかという疑念に常に付きまとわれているテレーズ。
これは妻子ある夫と不倫をしている女性そのものだろう、ただ、夫が妻に代わっただけで。
このあたりの心の機微が克明に描かれていることにも感動を覚えた。

恋人のリチャード(この人の人物像も非常によく描けている、限りなく家族も良い人なのだが、愚鈍っぽい感じがたまらない、というのがわかる)との軋轢の中で、キャロルと一緒にいることの方が楽しくなってくるテレーズの気持ちが手に取るように伝わってくる。

ラスト、この展開でとても驚いた。
こうなるとは思ってもいなかったからだ、苦いハイスミスと思っていたが、甘いハイスミスもあったのか・・・・