2016.01.18 幻の女


評価 5(飛びぬけ)

新訳ということで久々に読んでみた。
相変らず楽しめるし、冒頭の部分は後書きにも書いてあるように違和感ないし(変更がない)、全てがわかっている目で見ると、冒頭からむっとした男の主人公が「かぼちゃの帽子」の女性とデートする場所なんかをじいっと覚えようとしている自分がいる。
そこで出会った人達を覚えていようとしたりする。

ある男が奥さんと喧嘩をしてぷいと家を出て行った。
そこで出会ったお互い名前を知らずに会話を楽しみましょう、という一人の奇天烈な帽子をかぶった女性だ。
お酒を飲み、食事をして、観劇をする。
そして、家に帰宅すると、
奥さんが殺されていて、刑事達が待っているのだった。
証人であるはずのかぼちゃの帽子をかぶった女はどこにも見当たらない。
ばかりか、二人に会ったはずのバーテンダーやレストランの給仕達は全員彼が一人だったと証言するのだった・・・・



これで男が逃げたら、映画のハリソン・フォード逃亡者になる。
でも男は逃げない、というか逃げられないで裁判にかかって死刑の日が刻一刻と近づいてくる。
なんて残酷な筋立てだろう。

ただ一つの光明は、刑事の一人がもしかしておかしいかも、と気付いてくれたことだ。
そして親友が遠い地にいるのに呼び戻して彼に依頼するのだ、全権を託して。
一方で捕らえられた男には、妻の他に愛人がいる。
愛人もまたけなげに小さく動いてくれるのだがなかなかうまくいかない、いきかけると大事な証人が消滅してしまう・・・

全てがわかっている状態、で読んでみても、最後のところはぎょっとする。
ぎょっとしたあまり、ある部分を無意識に忘れていた・・・


以下ネタバレ
・よく調べてくれた親友が全ての犯人であったのだが、
(つまり不倫関係にあった)

この親友が「妻の笑い声」で殺しに至ったというところも怖い。
なぜなら、男も妻の笑い声を最後に聞いた男であり、あの笑い声が耐えられないものだと言っているので。

・一番のこの話の眼目、「かぼちゃの帽子の女を誰もが懸命に捜したが一体どこにいるのか」
は、
私が無意識のうちに忘れようとしてた怖いところ。

この食事の三週間経たないうちに精神病院に入って今もそこにいるのだった。
つまり、見つけたとしても意味をなさない人間だった。
だから親友をこういう形(刑事と女性の策略によりかぼちゃの帽子の女と思った人を殺そうとした)でなければ、捕まえられなかったのだ。