2016.02.15 少女の時間


評価 4.8

永遠の38歳、柚木草平シリーズ最新作だ。
ミステリだけれど、失礼ながらミステリのことなんてどうだっていい。
もう柚木草平の格好良さ、イケテル感じを存分に味わったから。
ここだけで十分楽しめたから。
美女がわんさか出てきて、女子高生から人妻まで皆が彼に惹かれていく、という中年男性だったら夢のような状況だけれど、女性から見るとこの男が「なぜこれだけもてるのか」というのが痛いほどわかる。
女にだらしなく、奥さんともだらっと別居中、小学生の娘がいるという悪条件なのに、なぜか惹かれる男、それが柚木有介だ。

まず会話が格好いい。
どの会話も無駄がなく、いや、じつはおおいに無駄があるのだがその無駄が女性のハートにばしっと響く無駄だ。
無駄で生きている男と言ってもいい。
会話の端々に軽いユーモアが混じっていて、そこも女心をくすぐる。
お金がない男なのに、ふらっと貸したくなる男、それが彼だ。

肝心な仕事(元警察で、そのコネクションをも使った探偵)は結構必死にやる、そして結果として解決する。
洗濯好きである(だから薄汚くないと言うこと、これも重要ポイント)
酒飲みだが酒のつまみを自分で作るマメさがある(どれもこれも美味しそう)
娘の加奈子のことになると、真剣に奄美大島に行けるかどうかと悩むうぶなところもある。
決して前の女性を悪く言わない。
それでいて、前に来た女性のパンティが残っていてそれを洗って洗濯物で干している中に隠しているのを、別の女性に見つかる、という「すき」がある男でもある。
現代だったら、ラインとかメールとかちゃらちゃらやりそうだが、これもまた携帯を今持ったというような人間なのだ。
だから昭和の男と言ってもいい、この平成の世の中なのに。
事件を調べるのも、ネットでばんばん迫っていくと言うよりも実際に足を運んでその人に会ったりしているのも、昭和っぽい。

・・・・・
2年前の未解決の女子高生殺人事件を調査していると、関係者の一人が死んだ。
東南アジアからの留学生を支援する組織があり、そこでボランティアをしてた女子高生。
これは事故だったのか、警察の見立てたように。
それとも殺人なのか。


柚木草平の格好良さとは別に、ミステリ部分では、まだ最後まで疑問が残る。
殺人犯の人の気持ちももう一度聞いてみたい。
ベトナムとの関係性もなかなか深い話なのだが、これはこれで終わっている、のもちょっと残念な気持ちだ。
ラストもこの展開でいいのかもしれないが、ちょっとだけ腑に落ちない感もある、だって仮にも元警察官であるのだから。
格好良すぎる柚木草平はラストまで格好良すぎた。

このシリーズの抜けている本を是非是非また読んでみたいと思ったものだった。

(ところで、この話、映像化するとすれば、と妄想して。
女性陣は山のように人を思いつくのですが、
柚木草平は全く誰も思いつきませんでした。
なので、本当に架空の物語の世界の人、であると納得)