2016.02.18 羊と鋼の森


評価 4.2

とても良い話だった。
ピアノの調律師になった若者の話、なのだが、幼い頃からピアノの環境にいたわけではない。
辺鄙といってもいい田舎に住んでいて、音楽と言う素養もない。
基盤がないのだ、自分の中に。
その青年がふとしたことで調律師の人に出会い、そこで働く機会を得る。
そこから生まれる葛藤、自分とは何か、音楽とは何か、そして他人の家に入り込んでその人の家のピアノの調律をするというのはどういうことか。
双子の姉妹の物語(二人ともピアノを弾くという双子)が間に入り、物語は進んでいく・・・・

調律師が狂った音を直して行くという作業だけではないというのをこの物語で痛感した。
温かい音、前と同じ音、と注文主は言う、それに対しての処置の仕方がまさに神業だ。
一人の青年が周りに見守られながらも成長していく姿、というのも読みどころの一つだし、彼が無垢のままの状態で調律師になった奇跡も、美しい物語に編み上げられている。

・・・以下ネタバレ
が。
内省が続くこの物語、私には合わなかった。申し訳ない。
主人公の内省についていけなかったし、そこはかとない薄気味悪さまで感じたのは、私の読み方が悪いからだろう。
全編美しい詩、なんだと思う、この物語。
詩、の世界を理解できた人には恩寵が待っている、出来なかった人には、?の感じしか残らない。
宗教的な感じが漂っている感じがした。
小川洋子の世界と似ているのだが、それとはまた違っている静けさが不気味な感じがした。

この年とは思えない質問を先輩にぶつけるのも、何度も、え?と思った(これって率直とか無邪気とか無垢とかで切り取られないところ)
また双子の片方が突然弾けなくなった顛末ってなんだろう?なぜこの子は弾けなくなったのか?そのあたりぼんやりとしていてはっきり伝わらない。
弟との確執のようなものもうっすらしているのだが、ここも隔靴掻痒の感じが免れない。