評価 4.8

新人さんだけどかなり気に入った。
このところの学校題材の小説って、なんだかいじめとか、ネットでのトラブルとか、受験とか、登校拒否とか、クラス内の派閥とか、先生へのおもねりとか、そんなのが多い印象だ。
私が読んでいるのがたまたまそういうのが多いのだろうか。
実際の現場でそういうことが起こっているのが多いので取り上げざるを得ないのかもしれない。
けれど、こういうのんびりとした典型的な学校の話、ってやっぱりほっとする。
季節の学校の行事なんかもほのぼのとしている。
しかも舞台が福岡という地方都市だ。
福岡愛が全編に満ちていて、待ち合わせ場所とかも知らない場所なのに、そこに行ったような気すらする。
天神とか名前だけ知っているけれど、この本を読んだら是非行きたくなった。

・・・
話は、普通の女子高校生「吉野」がクラスで最初に声をかけてくれた美少女と親友になる。
そのあと、学校内で本当に小さな事件が起こる。
それを鮮やかに解いてくれるのが、美少女「朝名(あさな)」の社会人の年上の彼の親友飛木(とびき)という大学院生だった・・・

ちょっとこのパターンで思い出すのが、北村薫の円紫さんシリーズだ。
これも大学生の私が謎を落語家の円紫さんに持っていくと思いもかけない真相を導いてくれる話だ。
これでも謎解き訳は年上の男性、であり、謎を持ってくるのは学生ということになっている。
日常の謎というところでも髣髴とさせる。
段々と問いかける側の女子が成長していく感じもこの小説を思ったのだった。

・・・
放課後スプリング・トレインは、謎そのものの解決もだが、恋愛模様も微妙に絡んでいるというのがなんとも眩しい。
学校生活そのものが実に楽しそうだし、それが荒唐無稽じゃないという感じが伝わってきて読んでいてすがすがしい。
ちょっと前の学生生活ってこんな感じだったんだろうなあ・・・と思うような学生生活だ。
美少女朝名の相手は小学校の先生だ。
朝名と先生の関係を眩しく見ながらも、泉は先生の親友の飛木になんとなく惹かれはじめているというのが文章から伝わってくる。

肝心の謎だけれど、最初の謎は、なぜ怒ったような顔をしていたのか、電車内のオバサンは、という謎だった。
意外な謎解きの展開だったが、あるのかなあ・・・という思いがよぎった。
まあ、あるのだろう、ここに書いてあるのだから。
一番面白かった謎は、文化祭で劇の主役の服が消えた、誰が盗んだんだろう、という謎だった。
これを快刀乱麻で解いてくれたのが飛木だった。
しかも彼は二つ答えを用意していた、吉野用と朝名用と。
吉野が主役の女の子の喫煙から引火して舞台服がだめになったことを察して共犯になって隠したことを飛木は見抜いていた。朝名達には、犬の仕業としている。

席替えの話も懐かしいなあ・・・と思った。
この謎はともかくも、席替えって学校で重要事項だったから。
最後の小学生の種の謎も他愛もない謎だけれど、読んでいてほこっとした。

全般に男の子の造型が女の子の造型より深い気がするのは気のせいか。
女の子の魅力があと一歩書いて欲しかった、特に朝名。
飛びっきりの美少女と言うのはわかるし性格もよさそうだし頭も良いのだが、今ひとつ彼女が浮かび上がってこない。
なぜ泉が彼女と友達でいたいのか、という強烈な何かを朝名からアピールして欲しい(まあ、単純に話が合ったということなのかもしれないが)
そういう意味でも、続けてこのシリーズ書いて欲しい。
朝名の内面がもうちょっと見たいなあ・・・と思うのと、家族関係(泉しか出てきていない、お母さんが)というのがそれぞれどうなっているのだろうというのがわからないからだ。
まだまだ学生は家のことは重要だと思う。
飛木君の佇まいが良い。

・・・・
最後の最後、驚いた。
絶対にここ騙される。



以下ネタバレ

・朝名とずうっと読んでいたのでこれが名前だと思っていた。
一方で語り手は泉、これも(作者の名前からして吉野泉だし!)絶対に名前だと。
しかも吉野という「苗字」らしきものも途中で出てくる。

しかし、朝名紗和、
自分は泉吉野、であった。
考えてみれば、最初の出会いからしてこの二人が前後で並んでいたのだから
あいうえお順。
更に男の子の相川くん、一之瀬も全て名前前半の子達。