評価 4.5

作品そのものの話ではないけれど、装丁が久々に箱入りだったのでとても嬉しかった。
しかもハサミが表のピンクのところに刺さりまくっていて、ここもとても好ましい。
ハサミ男からのハサミなのだろうが・・・・

2013年2月に他界した殊能将之の未発表短編3作と、デビュー前の日記(「ハサミ男の秘密の日記」とある)を収録した一冊だ。
どことなくどの作品もくすっとできるし奇妙な味を隠し持っている。
彼の出発点を示す一冊だと思う。
犬が怖い、は、犬を嫌いな人の気持ちが痛いほどわかった。
きっとこうだろう、と思う方向に話は進んでいたけれど、それでも読んでいて小さくわくわくする。

鬼ごっこは、「その筋の方」風の人達が誰かを探している。
前半部分で、なんで探しているのかというのがわからず、(何かをやらかしてしめようというのか)と思う。
普通このくだりだったらそう思うだろう、やらかしたのが、その筋の道理に反していることなのかそれとも琴線関係のことなのかはわからないが。
ところがこの作品、とても意外な展開だった。
最後驚いたのだった。
ゲームをしている人達であった、それも時間を超越している(享保とかの言葉も出てくる)人達の鬼ごっこだった。ああ・・タイトルが鬼ごっこではないか!

精霊もどし、はちょっと皮肉がこめられた作品だ。
自分の妻を愛している夫がなんとか死亡した妻を生き返らせたい、という儀式をする。
その時に必要な友人を連れてきて一緒にやってもらう。
ところが、妻は戻ってきたものの、見えるのは夫ではなく夫の友人。
なんともやるせない。
しかも最後の妻の言葉が静かに笑いを誘う。
妻は死んでいる、彼女に死後の世界を聞くと、ないと答え、私が答えているのだから間違いがないと言う。

最後のハサミ男の秘密の日記は、どうやって連絡を取っていたのかとか、どうやってハサミ男の受賞が決まったのかとかその経緯が読ませた。

大森望さんの解説もとても感慨深かった。