2016.04.24 ひぐらしふる


評価 4.6

苦い話の連作集で最後驚きがある。
どの話もちょっと意地悪だ。
その意地悪さが緻密に描かれていて、最後につながっていて、最後まで読むと
(こういうことだったのか!)
という気持ちになる。
けれど、そこまで十分どよんとした気持ちになっているので、最後驚きはあるけれど、そうなのかそうなのか・・・ぐらいに思ってしまう。
読ませるのだ、とても。
それなのに、そこここにわかりにくさが点在していて、惜しいと思った。

話は日常の謎(過去の謎)が段々わかっていく・・・というものだ。
最初のスイカの中の自分の首というのがよくわからないまま提示されていて、途中でもフラッシュバックのように意味の分からない場面が出てくる。
これらがラスト、あっとわかることになる。
仕掛けはとても面白い。

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この作者、嫌いではなく前の作品も読んでいるものが多いけれど、この作品、ちょっとわかりにくくないか。
まずこれが何かのトリック?と思ったがそうではないので書いてみると。

・名前がわかりにくい。
人が出てくる→名前を当然いう→苗字で呼ぶ人(この意味はあった)→あだ名で呼ぶ人→旧姓が出てきて→名前と苗字がどちらがどちらだったかわからなくなる人(苗字と名前の境目がない。ここが最初トリック?と思ったが・・・まあ関係あるのだが、トリックではない)

・有馬千夏(これは副タイトルにもあるので覚えやすいが・・・・まあここは多少ネタバレがあるので触れずに・・・)
・芥川利緒(あくがわがりお、有馬の高校時代の親友の一人。男言葉を使う)
・高村午後(有馬の交際相手。なんでいったい、午後なんて名前に!男だった当然だが)
・相葉成瀬(これがわかりにくい。有馬の高校時代の親友。結婚していて子供がいる、しかも双子で宵子という姉がいるのが1章でわかる。しかも結婚しているので旧姓まで出てくる。旧姓の必要性は?)
・式部恵瑠(しきぶえる、有馬の高校時代の男友達。この名前の特殊さ・・・・どうなのだろう・・・)

・あと・・・
三人称で書かれている、と思っていると、たまに有馬千夏の視点が入ってくる。たとえば20ページの後半から21ページまで、これは千夏視点だ。だけどそうなのか、と思って読んでいるとやっぱり三人称だ。千夏とあるのだから。
ということは・・・・
最後まで読んで、もしかしてこれは、書き手の千春の視点なのか、とも思ったのだが・・・小説として描いているという設定なのだからここも腑に落ちない。
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以下ネタバレ

これは有馬千夏を主人公としている物語になっていて実在の人物が出ているが
実際は

有馬千夏の妹、有馬「千春」の書いた「小説」

ということだった。
千夏は千春を幼い時に自動車事故からかばってくれて死んでしまう。
そのことが千春のトラウマになっている。
皆が「有馬」と小説内で読んでいるのは(恋人でさえ)、千夏という言葉をなるべく出さないためなのだろう。
ちいちゃん、もあるけれどこれは千春でも千夏でも呼び方は一緒だから。

それぞれの物語の(連作の)ちょっとした綻びは、ラストで、これを書いたのが「千春だったから」ということで全てが紐解かれる。