評価 5

なんと!
私がこの話に抱いていた印象は、
血まみれで、
スプラッタで、
中学生の生徒同士が戦うという反吐が出るくらいに悲惨な話、
だった。
これって、映画の映像予告を見ているからだろうか?

読んでみたら、はまりこんで、夜を徹して読んだのだった。
人を巻き込む吸引力が非常にある。
ただただバトルがつながってるだけではなく、それぞれの子供達の背景、思いのようなものも伝わってくる。
キワモノ扱いされたらとてもお気の毒だ。
読ませるエンタメ作品だと思う。
しかもSF学園小説でもあるというのを初めて知ったのだった。
この設定が現在の日本でどこかに行ってしまった子供達、とかではない。
しっかりと最初から設定は、「東洋の全体主義国家であり、大東亜l共和国がある(決して日本とは書いていない)。この監視国家である国の中に生きる人たちの中の子供の話、であり、アメリカは米帝と言われて敵国としてみなされている」というのが打ち出されているのだ。

文章力がどうこうと言い始めたらそれは、色々思うところもある。
あと一歩書き込んでほしい人もいる(特に私は桐山をもうちょっと書き込んでほしかった)
政府の意図もあと一歩詳しく書いてほしい。
けれどそういうことはさておき、物語の熱、のようなものを作品から感じたのだ。

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ある日、修学旅行に行こうとしているクラスがある、それは城岩中学三年B組の42人。
その中には、孤児であり孤児院で育てられた七原秋也がいる。
彼らはバスごと無人の島に連れ去られて、問答無用の殺戮戦を行うように命じられたのだった・・・・
最終は一人のみが助かる。


読み始めてすぐに思ったのが、これってハンガーゲームと似ている。
ハンガーゲームもやはり貴族的特権がある政府主催のゲームが執り行われ、反乱抑止のためにみんなで狩りをしていく物語だ。
これが2008年、バトル・ロワイルが1999年、バトル・ロワイアルもどうにかすれば、世界規模になったのだろうか。

ただ、決定的に違うのはバトロワ(以下略)は、
『普段とてもよく知っている同級生達の殺戮』
ということだ。
つまりは、成績はもちろん、学校生活での佇まい、誰と仲が良いか、どういう素行の持ち主か、運動神経はどうか(中学生でこれは大事なポイントだし、あと、これから殺戮に行くので生きていくのにも重要)、生きていく能力が高いのは誰か、というのもなんとなく皆の中の評価が定まっている。
ここが非常にこの物語の面白いところだと思う。
誰と仲が良いか。
というのは、誰が信用できるかというのにも繋がってくる。
それは生きることに直結してくるのだ。
例えば、女子の委員長は内海幸枝は実に彼女らしい戦法に出ている、信頼できる女子を固めようとしているのだ。
これって普段の信頼関係が委員長になければ、成り立たないことだから。
なごやかなこの集団が灯台にいる前半部分はとても印象深いし、後半との落差が大きいので小説の中でも読みどころ、だと思った。
委員長の集団でいようというのが、仇になって全員が撃ち合って死んでしまうという皮肉な結果にはなるが・・・

真面目な子あり、小心者あり、番長風の女子あり、勝手な行動をしようとする男子あり、と人物像も多彩に揃っている。
愛し合ってる男女というのも複数出てきて、中学三年生?とも思ったが、いやいやこれは架空の国だから・・・と思い直した。

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最初の方でばっと殺されてしまう秋也の親友がいる。
そもそも秋也自身が施設で暮らしているのだが、親友もまたそこで暮らしていた。
自分の全てを預けられる親友を殺されて茫然とする暇もなく、親友が愛した典子という女性が撃たれ、彼女と一緒に逃げようとする秋也の姿が際立っている。
ここにもう一人、異色の川田という男子生徒が加わる。
異常なほどにアイディアがありサバイバルに徹することができる川田。
彼を信用し三人組になるのだが・・・
この子たちの動きを見ていると、頑張れ頑張れ!という気持ちになってくる。

また秋也が絶対の信頼を置いているもう一人の親友、三村がいる(第三の男と言われている)
三村をさりげなく探しているのだが、残念ながら秋也と三村が出会うことはない。
もしこの秋也グループと、三村グループが混合すれば、もっといい方法があったのに、と惜しくてならない。
三村はひたすら電子機器関係でなんとかしようとしている。
そして非常に冷静な男だ。
あと一歩というところまで行くのだが、そこで実に余計な人との出会いがあり殺戮に巻き込まれて死亡。
惜しい、本当にこの作戦は惜しかった・・・


桐山という男子生徒がこのゲームに一番乗っていて、しかも途中で防弾チョッキまで手に入れて最強になる。
(防弾チョッキを手に入れた時点で、ああ・・こいつか最後まで生き残るのは・・・と絶望的な思いになった)
彼がどういう人間かというのは途中で何度か色々な人を通して説明がある。
惜しいと思ったのは、彼の学園生活をあと一歩描いてほしかった。
このゲームに巻き込まれる前はどういう感じだったのか、どういうクラスの立ち位置だったのか。
そのあたりがもっと詳しく描かれていて、もっとエピソードがあったら面白かっただろうに。

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生死を分けるときに、子供たちが何を重要に思っているかというのがとても大きなカギになってくる。
そして誰が信頼できるかという見極めがサバイバルには必須ということも。