2016.05.30 古城ゲーム


評価 4.4

医学生のバスチアンが参加したゲームは疑似体験型ゲームだった。
14世紀の魔女や騎士になりきって話す、そして行動する。
ルールとしては、14世紀に存在しない物や持ち込むことは出来ない。
最初の時点で眼鏡すら取られ(14世紀にはなかったから)、携帯もなく、懐中電灯、薬なども携行することができない。
最低限の装備で深い森をチームで放浪する。


最初の方で、バスチアンがひ弱っぽい医学生であり、何らかの確執を父親と持っているということは提示されている。
そして彼がこの体験型ゲームに参加する気持ちになったのは、一人の女の子ザンドラにふらっと心を持っていかれたから。

最初の方で、皆が集まって森に実際に入っていく場面とか、お互いに中世の呼び名で呼び合ったり(だから二つ名前を覚えなくてはならないのだが、すぐにこれは終わるのでそれほど気にしなくてもいい)する場面とか、おなかが本当にすいて食事をする喜びとか、水を汲んでくるという単純なことから、必須であろうトイレの穴掘り場面とか、リアルで読ませる。
ずうっとずうっと呪いがあると叫んでいる魔女役のドーラはうざったいけれど(最後までそしてうざったい)

この話、ミステリとして読むと、実に微妙だ。
そもそも設定の『中世の恰好をしてはいる』というのはすぐに失踪者が現れなくなってしまうのだから、この設定は必要?と思ったりした。→バスチアンを引き寄せるためだろうが・・・

そして、次々に失踪者が出てきて、更には、昔の墓があいていたり、奇妙な叫び声が聞こえたり、赤毛の何かが走り去ったり、ウジ虫が貴重な食べ物に入っていたり、犬が人骨をくわえてきたり、しかも病気の者も出てきて、重大な怪我の者も出てきて、後半は、ホラーパニックものになっていく。
ドーラという魔女の役目の人間が、いちいち昔の王子物語の祟りだというのに、だんだん皆が感化されていくさまが心理描写となっている。
しかも良かれと思って入り込んだ古城の場所が、上をふさがれて出られなくなっていく。
そこにはかつての騎士たちの骨まである。パニック状態になっていった若者たち。
そこでみんなが決断したのは・・・・・

・・・・・・・・・
前半のかなり最初の方で、ザンドラという女の子が一癖あることが分かる。
彼女が医学生のバスチアンを誘ったのは決して好意からではなかった。
こうして彼女に捨てられた形になり(しかも眼鏡がない!)バスチアンの心の平穏は乱れていく。
この物語、バスチアンの成長物語でもあると思うのだ。
ハープ弾きのイーリスに徐々にひかれていくバスチアンがいるのだが、イーリスもまた重大な秘密を持っている。
また絶世の美女のリスベートも皆に言えない秘密を持っている。
当のバスチアンもまた父親との確執というものを背負っている。
そして一番の秘密を持っていたのは・・・・

最後の方で、全員が閉じ込められ極限状態になっていく様子は、ガイ・バートの『穴』を彷彿とした。
攻撃性が高まり、自暴自棄になり、人の本性が出てくる姿・・・・

・・・
この物語、読ませはするのだ。
だけど、最後に真相がわかったときに、こういうことだったのか・・・ぐらいにしか思えなかった。
カタルシスが私にはなかったのだ。
全体の作りと真相とのバランスが不釣り合いのように見えた。
最後、なんだか色々な思いが残ったのだった。

以下ネタバレ
・このゲームの主催者のパウルは全てを企てた男だった。
彼は、バスチアンの腹違いの兄であった。
自分の境遇を恨み、高名なバスチアンの父親からお金を巻き上げようとしていた(そして巻き上げた・・・なんだか・・・これってありなんだろうか。)

・一方でバスチアンの恋人になったイーリスは
かつての恋人からDVを受けていて、ストーキングされているという恐怖におののいている。
そしてそのかつての恋人はパウルと手を組み、このゲームに陰から参加している(これまたなんだか・・・・こんなに都合よくワル同士が同じところで結び付くものか・・・・)

・最後の城の場面で、異常な精神状態になった若者たちは、生贄にバスチアンを選ぶ。
そこを一応救った良い人っぽいのがパウル。
でもパウルは父親からお金をふんだくるつもりだったから、バスチアンに死んでもらっては困るのだった。
そしてバスチアンは剣でイーリスの元恋人を刺して瀕死の状態にさせてしまう。
(ここもなんだか・・・結局父親のつてで、この罪は抹消される・・・これでいいのか・・・)