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評価 4.8

楽しかった。
都市伝説にまつわる話、というのが恩田陸らしい。
彼女らしい世界が広がっていて、ちょっとした迷宮、ちょっとした日常の不思議さのようなものが全体からにじみ出ているのだ。


元々は、河北新報に載せた「ブリキの卵」という小説があって、それを挟んでエッセイが入っている。
プラス魔術師1999(これは象と耳鳴りに入っている)、そして震災後の魔術師2016が最後を締めくくっている。
エッセイの中で少し怖い、と思うのは、やはり肉親の死、にまつわる話だ。
子供がおじいちゃんがいる、といった自分の後ろを見ることができないという気持ちや、個人が好きだった店から全くの偶然で仕出し弁当を頼んだ話、とかちょっとぞくっとした。
このエッセイと小説が挟み込まれた感じが最初どうなのかなあ・・・と思っていたのだが、思わぬ(狙ったのかもしれないが)効果を生んでいた。
現実であるエッセイの不気味さと、架空である小説の不穏さが奇妙に相乗効果を上げているのだ。

にしても、関根一族が懐かしすぎる。
関根多佳雄をはじめとして、関根春(puzzle)、関根夏(図書室の海、)、関根秋(六番目の小夜子)姉妹も忘れ難い人達だ。
最後の話は、今の津波の災害の話と、昔の津波の災害の話を興味深い形で結び付けている。
駆け抜ける馬の伝説・・・
本当にあるような気がしてきた。