評価 4.9

テオ・・・・・

監禁小説だ。
それもこの21世紀の現代に行われた監禁で、「どこかに永遠に監禁されている」という類ではなく、なんと労働をさせられての監禁なのだ。
これがすさまじい監禁だ。
しかも相手は、よぼよぼとした老人二人。
しかし銃を持っているので、なんとも手出しができない。
二人がタグを組んでいる間は、どうにもできない。
じゃあ、この二人を引き裂くように言葉で誘導できないのか、と思ったりするが、そこは試みているのだ・・・・

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最後の解説にもあるが、派手な小説ではない。
どんでん返しも特にない。
なのにこれだけのめりこむように読んだ小説も久々だった。
どこかでどうにか出来なかったのか。
どこかで違う道を行けなかったのか。
そんなことを考えた。

自分の妻を寝取った兄に暴力をふるって刑務所行きになった弟テオ。
妻を愛していたのに、最愛の妻だったのに、兄は手を出した、何でも持っていた兄だったのに。
テオは、出所後妻へのいとしさも変わらずにあったが、兄を半身不随になるまで叩きのめしたのでその後の施設にふっと訪れたのだった。
そして口もきけずに不自由な体の兄に暴言と暴力を繰り返しそこからまた逃走した弟の姿がある。
ここから山の中に入って、「親切な」おばさんに助けられながら山へのピクニックを始める・・・・


冒頭からこの山のピクニックまで案外長い。
この山の風景の美しさや、自然と接して、宿屋のマダム・ミニョンの美味しい料理サンドイッチ、冷えたキッシュ、果物を食べていくにつれ、出所後荒れた心を癒し人間性を取り戻し、心が健全な方向に行っているテオの心持ちが手に取るようにわかる。
この散歩の中で、別れた妻リルのところに最初に行くべきだった、と反省しているテオがいる。
ここが全て読み終わってから戻ってみると、(そうだよ、そこで兄の所にしつこく復讐しにいかず、リルのところに行っていればあなたの運命は変わっていたのに!)と思うのだ。

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ところが暗転。
ここから老兄弟にいきなり監禁される、しかも労働のために。
先人がいて、この人の絶望的な話(何度も逃走しようとしたが失敗した)も心をえぐる。
この人がいる間はなんとか二人で生き延びる人間的な助け合いも行われていく。

精神と肉体のすさまじいまでの破壊。
テオも何度も逃走しようとする、一度は、森の中に逃げ込んだと見えた、しかしもっと最悪な形で捕まってしまった。
この脱出場面の逃げた!という高揚した気持ちと、またしても捕まった!という絶望した気持ちの交錯場面は非常に読ませる。

徐々に破壊されるテオの精神を読んでいるだけで胸が詰まってくる。
しかも、最初のところで、医者が語っていて、全体はテオの一人称なのだが、これがテオの手記だということが分かる、だからおのずとテオの運命というのは最初から分かっているのだ。

以下ネタバレ
最後の方で元妻のリルが献身的に来てくれていることが分かる。
やっぱりリルのところに最初に行けばよかったのに!!