2016.07.03 戦地の図書館


評価 5

表紙からして涙。
そして最初の方に戦時の写真が入っている、ここにも涙。
こんな状況下でも人は本を読むのだとそこに感動したのだった。

読んでいくと最初の章は、ヒトラーの焚書のことが事細かく描かれている。
狂気に翻弄され貴重な本をうず高く積み、炎の中に投げ入れていく様子におののいた。
それはある本はユダヤ人の血の混じった作家の本であり、ある本は時勢と合わない本である。
なんという残虐非道な行為だろう。
そして一方でこういうことをする、というのは、本がいかに人を啓蒙して変えてしまうかというのをヒトラーが重々承知していたということなのだ。(だからヒトラーはこういう面でも悪魔的な天才だったと言えよう。)

ここで、アメリカの兵士達に本を送りましょうという運動が起こる。
図書館を中心としてそれは当初寄付の古本で賄われているがそのうちこれが純粋に送られる本、となる。
それはヒトラーのこの蛮行に反抗する意味も含めてだが、実際に戦地の兵隊さんたちは本を欲求していた。
喉から手が出るほどほしかった本。
それは、あらゆる分野にまたがった、それはそうだろう、兵隊は知識階級から労働者階級まで幅広く集められたのだから。
この中で人気の本もまた出てきて、ブルックリン横丁、という本が爆発的な人気になったのは、自分の幼い日々を思わすような文章があるということだった。
彼らは読む、負傷した病院で、塹壕の中で、一人になれない部屋の中で、突撃までの待ち時間で。
ただひたすら読むのだ、現実逃避というのではなく彼らが生き抜くために。
心の安定を求めるために。
緊張の中のつかの間の休息のために。
人と接することを余儀なくされ一人になれない兵隊が一人になるために。
そう、ここでは暇つぶしに読むのではなく生きるために本がよすがとなったのだった。

・・・
兵隊文庫がここで生まれた(軽くて小さくなった)というのも面白い。
作家と切羽詰まった状況の兵隊さんたちとの文通も微笑ましい。
戦争が終盤に至るにつれ、アメリカの本を同盟国のイギリスが読むという形も起こってきた。
更には、ヒトラーによって破壊されつくしたヨーロッパの本たちに、アメリカのこの本たちが送られるという形も起こってきた。
広がりを見せてきたのだ、本を兵隊さんに送るという一つの行為が。

それにしても、この中で、驚いたのが、最後の大学進学の事だった。
アメリカで戦争が終わってから大学に入れるよう特別措置を課した。
その時に多くの復員兵が大学に行ったのだが、これが平均点をあげる原動力になった。
それは多くの兵隊が本を読み続けていたからだった。
ここにも感動した。

最後のヒトラーが発禁した書物の多く(思想的にも、だが、作者がユダヤ系というだけでも発禁)を見て、胸にせまるものがあった。
そして。
ヒトラーが燃やした本より、戦地にこうして送られた本の方が数が多いという事実に圧倒された。