2016.07.12 ジョイランド


評価 4.6

ノスタルジーあふれる作品。
「現在の自分」が年老いていて、これは過去の出来事で懐かしみながら語る、という手法なので、スタンド・バイ・ミーとかを強烈にやはり思う。
折々に、これがどういう結果になったのか、この人たちはどういう風になったのか、といういわゆる「その後」が描かれている。
そこが、過去の出来事を読みながら(でも読んでいる時点では現在)先の事を知っている読者、という奇妙な立ち位置を与えてくれる。

話は、ジョイランドというちょっと古びた海辺の遊園地が舞台だ。
ここでひと夏のアルバイトをする大学生のデヴィン・ジョーンズ(ぼく)がいる。
彼女だと思っていた女性にふられる経験、新しい友達との出会い、働く大人達との触れ合い、そしていくつかの奇跡、と運命的な出会いと死。
たくさんの思い出が詰まったジョイランド・・あれははるか遠い昔になった・・・


遊園地という明るい場所で、一点幽霊屋敷でかつて殺された女の子が見えるという噂がある。
ここはホラーだ。
見える人と見えない人とがいるらしい。
そして過去、遊園地で何度も殺人が行われたということをデヴィンは知るのだった・・・・・


ホラー要素としては、幽霊屋敷で死んだ女の子が見えるという噂があり、実際デヴィンの友達になった男の子がこれを見ている。
ミステリ要素としては、遊園地で殺人を行っているらしい誰か、という部分がある。
また、超常現象としては、足の悪い病気の少年が人の見えない何かを見る、霊感があるというところや、遊園地の中にいる占い師の女性がデヴィンの未来を見る、とかがある。
また偶然、とはいえ、デヴィンが、食べ物が詰まった女の子を助けた話が第一回目、遊園地の同僚エディが心臓発作を起こしたのを助けたのが二回目(しかもこれはとても重要事項でのちのちデヴィンの命を救うことになる→エディが霊感のある少年マイクのところに幻で出てきて、デヴィンが殺される寸前に警告したので、マイクの母がデヴィンを探しに行って命を助ける)、と何度も人の命を救うエピソードが盛り込まれている。

青年らしく自分の失ったであろう恋に悩むデヴィンの姿が初々しい。
一方で、感じのいい女の子でアルバイト仲間のエリンと、しゃべりまくる大学生トムとの三人の友情の話もとても微笑ましい。→このトムとエリンはのちに結婚して、そしてトムが先に往くというところまで書かれている)
エリンがかわいらしく機知に富み、明るく元気な女の子というのが見事に描かれている。
そして失った恋の痛手からのほとぼりが冷めて、ある一つのあこがれが彼の心の中に起こる。
それが海辺で出会ったアンとマイクの親子だった・・・

後半アンとマイクとデヴィンの場面がどこをとってもとても美しい。
なんとかマイクの微笑みを見たい母の気持ち、そしてそれに答えようとするデヴィンは遊園地という場所を借りて、マイクに最高の思い出を作ってあげるのだった・・・(同時に幽霊屋敷に閉じ込められていた少女の霊を少年マイクは解放してあげる)
徐々にアンに傾いていくデヴィンの姿もまた青年そのもので読ませるのだ。

後半、意外な犯人が出てきてここも驚いたのだった。
この人がだったのか、と。

多分キングは緊張せずに筆の赴くままにこの作品を楽しんで書いたのだと思う。
ただ・・・
ただややガツン!がないか、と私は思った。
美しいのだが。が。


以下ネタバレ
・殺人鬼は、観覧車担当のレインだった。

・最初の方から出ていて、良い人のように見えていたので驚いた。
彼とデヴィンが観覧車に乗って殺されそうになったのを、下からスナイパーとして(だから射撃の名手というこの前段があった・・・)アンがレインを撃ってからくもデヴィンは助かった。