評価 5

なんてたって、アルレー。
だけどこの話そのものは私の考えているアルレーっぽくない(とラストまでは思っていた)。
心理描写はもちろんあるのだけれど、それよりも最後の方まで実に映像的なミステリが続いていく。
誰が犯人かというのも冒頭でわかる。
また私はわからなかった部分もあったが、比較的話もどうしてこうなっていくか、こうしていくか、というのが読み終わった後考えてみると、シンプルなストーリーとも言える。
一言で言えば、

金持ちが暇に飽かせて、誘拐をし金を盗んだ、

という物語なのだから。

退屈しているすべてを持った金持ちの男がロンドン警察の重鎮の娘を誘拐し、脅迫する。
いったい何のために?と思うと、計画のある部分でこの重鎮の力が必要なのだ。
金持ちの男通称ダブルダブルが考えたアイディアというのは、航空ショーの売上金を奪うという筋立てだった。
彼がそれをするのは、ただやってみたいから(なんせお金持ちなのでお金はあるという奇妙な状況)
これに妻と数人の脅迫された部下も加担する・・・


そして最後まで読んで、私は驚愕した。
このラストこそが、アルレー!
アルレー降臨、と思った。
まさかこういう展開になるとは。

途中、犯人のダブルダブルが社内の人間を共犯者に仕立て上げるために脅迫する場面は読ませる。
そして彼らが意味わからない訓練をするところもまた面白い。
でも何より読ませるのは、ダブルダブルの妻、の心なのだ。
彼女は「なぜか」自殺志願者を募集して面接している。
これがなぜなのか、さっぱり私にはわからなかった。
なぜ自殺志願者?
最後の最後でこの意味が分かり、そしてこの途中で妻が自殺志願者の心とシンクロしていく様子が最大に読ませるところだと思った。
だからこそ最後の、ぞくっが効いてくる。
最後の二行が怖かった・・・・というか、最後の2ページが白眉。

以下ネタバレ
・自殺志願者はダブル・ダブルが最期すべてが終わってから整形手術をして彼に成りすます計画の一環だった。

・ダブル・ダブルの妻は、夫に尊敬の念は抱いていてこの共犯になっていた。
しかし自殺志願者の一人をピックアップして話をしているうちに彼にとりこまれてしまっていた。
自殺をさせる前の瞬間の彼女の心の動きが非常に綿密に描かれている。
やめさせる瞬間は今しかない。
でもできない。
そのうち死んでしまう。
この時点で妻は心にダメージを受ける。

・そしてダブルダブルが飛行場で現れた時に、彼は整形手術をしているが、彼でもなく自殺志願者の顔でもなく、どちらも合わせもあった顔になっている。
そして妻はそれに衝撃を受けたのだった・・・