2016.08.04 人生の真実


評価 5

本当にうまい、グレアム・ジョイス。
全体を堪能した。
読み終わるのが惜しくてならない一冊だった。

世界幻想文学大賞を取っているので、幻想の方向と思うと、それは入っているが実に普通の家族の物語だ。
どちらかというと普通の家族の物語を読んでいくといった感じに近い。
それなのに、この面白さと言ったらどうだろう。

最後に若草物語という指摘が書いてあったが、私はこの物語、アメリカドラマのBrothers and Sistersを激しく思い出した。
ここでも求心力はサリー・フィールドのお母さんだ。
子供たちは5人いて、全員が女の子ではないけれど、成人した子供たちがあれこれやってくれるという物語だ(そして私はこのドラマフリーク)

『人生の真実』では女の子ばかり7人いる。
しかもお母さんは幻影を見る人、という設定になっている、必ず何かの前触れが自分の目の前にやってくるという・・・・
子供達の中で美人だが身持ちが悪い少々頭がおかしいと言われているキャシーはやはり特殊な能力を持っている。
そして子供を一人生んでその子を養子に出して処理をした。
しかしまた別の相手と子供を一人作ってその子を養子に出そうとしたその日に心変わりする。
その子供フランクを姉妹全員で育てていこう!と言ったのがお母さんのマーサだった。
彼女だけはキャシーの能力に渋々ながら気づいているのだった・・・・
いつしかフランクも特殊な能力を持っていることが分かってくる・・・
フランクは、姉妹たちの間をくるくると回されていくことになるのだ、時にお母さんのキャシーと一緒に。


当然それぞれの結婚している娘たちには連れ合いがいる。
連れ合いの物語にもなっているし、またこれから連れ合いになる人の品定めもまたある。
頭がいいビーティが恋人として連れてきたバーナードはインテリの労働者であった。
彼が、そこに座っている人は誰ですかと言った時に皆が凍り付いたのが笑えた(なぜならそれは「死んだ」お父さんだったから。それがバーナードには見えたのだった)
そうなのだ、この小説、くすっと笑える場面が何度もある。
オリーヴと八百屋をしているウィリアムの浮気の話の時もそれだ、これは戦争中に親友から託された一つの願いだったはずだったのに(親友が、こいつと寝てくれと妻に伝えろと言う)いつしか深みにはまってしまったウィリアム・・・
この結末も思いもよらない展開で面白かった→マーサが知り合いの産婆に頼んで何やら画策して、奇妙な植物を浮気相手の部屋に置いた。そしてウィリアムはその匂いを嗅いで妻の元に戻ってきた)

ビーティとバーナードはコミューンのようなところに住んでいた、複数の性に放埓な人たちと。
しかしここでフランクに言い寄ってくる男がいたのに誰も気づかなかった。(フランクはここに預けられている時期だった)
そしてフランクが自分たちのベッドに来たのでフランクのベッドにバーナードが行き、そこにそうとは知らない言い寄ってくる男が着た場面など大爆笑物ではないか!

またアイダとゴードンの間には子供はいない。
しかしゴードンは本職が徐々に死体防腐処理者になっている。
この気味悪い仕事をこっそりやっていたが、ある日フランクに見つけられ、アイダとフランクとともにこの作業をやる羽目になる。
しかし、ある日、ナイフをあてようとすると死んでなかった人が起き上がって、皆飛び上がる、とこの場面にも笑った。

双子の未婚のイヴリンとアイナの完璧と言えるほどのフランクを迎える態勢も楽しめた。
彼女たちが厳格にすればするほどフランクの心が離れていくというのに・・・
更に、ここでフランクの母親キャシーまでが息がつまっていくのだ。

農場主のトムとユーナ(五女)は幸せな生活をそれなりに送っているが、ここにフランクが来ることによって更に楽しい生活になってくる。
ここでフランクは不思議なものを発見するのだった、ガラスの中の男。
これが最後まで読者側にはなんだかわからない。
フランクが頭の中で描いた妖精のようなもの?とぼんやり思っている。
これも最後に見事な謎解きがある。

・・・
コヴェントリーの爆弾攻撃の間のキャシーの取りつかれたような勇敢な行動も読ませる。
しかもここで、あとからとても重要になってくる目撃談、ゴードンの活躍もキャシーは目撃する。
そして亡くなった父にも会うし、死者の男の子にも出会う。
八面六臂の活躍をしてキャシーは家に戻ってくるのだった。