評価 5(飛びぬけ

面白い!
アルゼンチンの奇書という触れ込みだけれど、迷宮に入り込んだような読書だった。
第一部が終わり、第二部で、え!
また違った世界が広がっている。
次を読んでみるとまた違っている。
あ、ここは予測可能だ、と油断しているとまた違った展開が待っている。
いったい自分は誰なんだ、この世界は何なのだ、系の話が好きな私にはたまらなくのめりんだ一冊だった。

自宅で拳銃自殺しようとしている男テッド・マッケイがいる。
自殺が何の理由かはここでははっきりとはわからない。
ただこの人に奥さんと小さな娘たちがいて、彼女たちが出かけていて戻ってきたときにその惨事を娘に見せないような配慮をしたりしている(貼り紙とかで)
脳内の声のようなものが聞こえてくるので、なんだろう?とは思っていた、私は。
そこにひょっこり玄関を激しく叩く音が・・・・
リンチという男がまさにその時にやってきて、なんとかこの自殺を食い止めようとする、それも奇妙な方法で。


奇妙な方法とは、ある「組織」から伝言をテッドに依頼されていて、それは「自殺する代わりにある男エドワード・ブレイン(これは殺人犯なのだがうまく法の手を免れた)を殺せ。そしてそのあとにもう一人殺せ。」
というものだった。
そのもう一人、とは、テッドのように自殺願望がある男ウェンデルという男だという。
そして、テッドはこれを実行する、最初の殺人をうまくやりおおせるのだった。
そのあとリンチの所在を探すのに、自分の昔の旧友のパーティーに行って、聞きだすのだった。

更に、湖畔にいるウェンデルという男も殺すのだが、彼は家族がいないとリンチに聞いていたのに、なぜか妻や子供達が近くから戻ってくる声がする、それに非常に動揺するテッド。
リンチが嘘をついていたのだろうか。
間に、穏やかなセラピストローラがいて、ここで幼い日のチェスの思い出を語る、と同時に父親の浮気の現場にいたという悪行を見た、という心の闇も告白するのだった。

そしてキーワードがオポッサム。
この動物が見えたり消えたりしている・・・・
またチェスと関係している(幸運の印)の蹄鉄も重要なファクターになってくる、あとあとまで。

(以下ネタバレしている箇所があります)

・・・
第二部に行くと、まず驚くのは全く同じ状況が広がっている。
いわく、拳銃自殺しようとしているテッド。
そしてここでは、医者が頭に腫瘍があると言っていることが判明する。
ということは、腫瘍のなせる業なのか、オポッサムとか無数の言葉は。
第二部では、自分の妻ホリーの愛人がウェンデルであるということを突き止めた、と思ったのに、本当はリンチと愛人関係であった、とテッドは理解する。

ここでもセラピストのローラが端々に出てきている。

・・・
第三部、ここでようやく全貌が見えてくる。
なぜなら、精神病院に入れられているから。
しかしローラはこちら側の人だったのか、今までしたこと、見たものは何だったのか。
テッドには本当に奥さんのホリーがいるのか。
どこが本当の世界なのか。
という疑問が次々に沸き起こる。

そしてラスト、非常に奥底に隠れていた、ある一つの極悪な事実が開かれていくのだった・・・

ネタバレ
テッドの父親は連続殺人犯人であり、次々に女性を殺していた。
幼い時に、テッドはそれを目撃しているが封印していた。
大学時代にある教授が殺されたのもテッドの父親が犯人だった、なぜならテッドの恋人がその教授と付き合っていて、暗がりで教授をテッドだと父親が思っていたから。そしてテッドが父親が連続殺人犯だと知っている、と思い込んだから(実際は思っていなかった)
テッド自身も殺されかけてるのだった。

ウェンデルは、テッドのもう一人の分身。
実際のテッドの別荘が、湖畔のウェンデルの家だった。
実際のテッドにはホリーという妻と小さい娘が二人いる(だからウェンデルも妻と娘が二人いる)

第一部で、殺してほしいと最初に頼まれた人間(殺人犯であるが、この人自体も)は、テッドの腹違いの弟だった。

そしてテッドは廃工場の火災で亡くなる。
同じ場所にいたローラは助かる。