2016.09.07 テロ


評価 4.4

とても面白い試みの本だと思う。
一つの命題が出されているのだ、具体的な事例とともに。

『多数の人を助けるために少数の人の犠牲はやむを得ないか否か』

法廷の形になっている。

話は、
2013年7月26日、ドイツ上空で旅客機がハイジャックされた。
テロリストがサッカースタジアムに旅客機を墜落させ、7万人の観客を殺害しようとした。
しかし緊急発進した空軍少佐が独断で旅客機を撃墜する。
乗客164人を殺して7万人を救った彼は英雄か? 犯罪者か?
結論は一般人が審議に参加する参審裁判所に委ねられる。

という話だ。

これを読んで、途中ですぐに思ったのがサンデル教授が白熱教室で語ってくれたトロッコ問題だった。
これもやはり、複数を助けるために一人を犠牲にすることができるか否かという問題だった。
しかも、その方法にも様々なシチュエーションがある。

テロ、の中にも様々なシチュエーションがある。
それは、もしも、の話ともいえよう。
・もしもサッカースタジアムの人たちを撃墜までの間に移動させることができていたのなら
・もしも撃墜をもう少し待って、機内の人たちがコックピットに突入しようとしていた状況なのでテロ犯人を押さえつけることができていたのなら(回収されたブラックボックスからは機内の人たちがどの段階まで行っていたかもわからない)
・もしももしも・・・

旅客機に乗る人はテロにあう危険性があると認識している、と言い放つ被告人。
そしてそこに子供がいたということを指摘されそれは親の判断だったと更に言う被告人。
しかし撃墜された飛行機に自分の妻子が乗っていたらということを仮定されると、この話にも陰りが見える。

最後に、二つの結論が出る。
どちらも至極まっとうな結論だと思う。
日常でこういうことを考えることが少ないので、そういう意味で面白い読書だった。娯楽性ということでははずれている作品なのだろうけれども。