評価 5

これだけの分厚い二冊、さすがに読ませる力があるキング!
しかも後半への加速度合いが素晴らしい。
前半、ちょっと乗り切れなかったので、鈍く読み進んでいったのだが、上巻の最期の方で一気に加速して・・・・
ホラーではなく、まっとうな推理小説であった。

まず、犯人が最初から分かっている。
どういう奴かというのもほぼわかっている、筋金入りの頭のおかしい奴だと。
この人の名前も何をしているかも早い段階でわかる。
普通ミステリって、この部分が隠されているのだが、キングはそこを惜しげもなくばっと出している、作品に絶対の自信があるからだろう。
人々の造型が犯人を含めてとても練られている。

追う側、は、退職した元敏腕刑事の男とこれまたわかりやすい。
そして退職して生きる希望も無くなってテレビ三昧の日々、ピストル自殺しようかぐらいに思っているだらけた元敏腕刑事が、ある挑戦状を犯人からもらうところから、俄然生き生きとし始めるのだ。

冒頭、メルセデスが求職者の群れに突っ込んでいく場面はまことにむごたらしい。
その前の小さな交流を読んでいるだけに、ますます心が痛む。
そのメルセデスを運転していた犯人からの挑戦状こそが、皮肉なことに死なせる方向ではなく(犯人は自殺させたい)生きる方向に行かせる、のだ。

追う側、犯人と交互に描かれていて、犯人の異常な生活も徐々に見えてくる。
犯人の弟の事件というのが唯一後半まで引っ張られていくが、これもわかった時に、ああ・・・こんなことが!と戦慄させられた。

・・・・
上巻のジャネル(メルセデスを犯人に盗まれ事件を起こされる。そののち世間の目に負け(と思われている)自殺するオリヴィアの妹)が登場してくるあたりからぐっと話が面白く深みを増してくる。
なぜなら、彼女とホッジスの話にもなってくるからだ。
ところが、これもまたいい意味で裏切れらるのだった。
作者はとても非情な話に移行させている。

優秀な黒人高校生ジェローム(ハーバード大学に進学希望)の姿が冒頭から好ましい。
彼のまっすぐなホッジスへの尊敬の気持ち、機械に弱いホッジスの穴を埋めるべく働くジェロームの姿が生き生きと描かれている。

そして、後半。新たな人間が現れた、味方側に。
それは精神をやや病んでいるホリー。
・ホッジス(元刑事で心を病んでいた)
・ジェローム(まっすぐな心なのだが、黒人ということを常に意識している)
・ホリー(母からの呪縛から逃れられず精神を病んでいる女性)
このでこぼこ三つ巴がそれぞれの得意分野を生かして、犯人を追い詰めていくところが圧巻だ。
特にコンサート会場の場面はどう阻止するのだろう、と思っていて息がつまる思いだった。

また犯人側の家庭事情もどろどろしていて不気味だ。
どのようにしてこの怪物が出来上がっていったのか。
母親との関係性はどうだったのか。
そして特に、母親がハンバーグを食べるシーンは驚いた。

この作品、まだ続いているようで、これが第一部ということが嬉しい。
この三人のタグ、おおいにおおいに期待する。

(上巻147ページ3行目、誤植ではないか。
「わたし自身についてえいば→わたし自身についていえば」

以下ネタバレ
・ジャネルといい仲になって、これもホッジスの精神状態をアップさせるのだが・・・
あっさりとジャネルは犯人に仕掛けられた車の爆弾によって殺されてしまう。
ホッジスがこのあと、ここから立ち直るのが早いなあとそこは思った(心の中で思っているにせよ)
だからジャネルは後半の重要人物と思ったら違って、ホリーだった、重要人物は。

・犯人プレイディの母親は
彼がジェロームの犬を殺そうとして大量に作った毒入り肉を
母親が珍しく調理してハンバーグにして自分が食べてしまって死亡する。
完全なる犯人の自爆であった。

・母とプレイディは関係を持っている。
そして、彼らは事故で半身不随となった弟を殺していた。

・プレイディは、パソコンの仕事とアイスクリーム移動販売の仕事を掛け持ちしていた。
移動販売の時に何度もジェロームと顔を合わせていた。

・最後、プレイディは病院で生き返る。
どうなのだろう、このあとこの人間、登場するのだろうか・・・(なので次巻をぜひ!)