評価 4.4

表題作がミステリの候補作に入ったようだが・・・
私は別の作品がとても良くできていると思った。
こういうちょっと残酷な短編集というのは、読後に、あ!と思わせることが大切なような気がする(どんでん返しとかではなく)
この「あ!」があった作品は、姉のように、だったのだ、私の中で。

許されようとは思いません/目撃者はいなかった/ありがとう、ばあば/姉のように/絵の中の男
の4作品が入っている。

・許されようとは思いません

は第68回日本推理作家協会賞短編部門の候補作だ。
結婚相手とうっすら考えている女性とともに、祖母の納骨をしようと何年振りかに田舎を訪れる男性がいる。
あの優しかった祖母は殺人をしたのだった、祖父の死後、自分の義理の父親を殺してしまったのだった・・・
そして・・・

後半で婚約者ともいうべき女性がこの真相を見抜くところが面白い。
そして、そこまでの伏線というのも色々納得がいくのだった。
村八分と村十分の違いが冠婚葬祭にあったというのを喝破する婚約者がいる。

このオチ、わかるようでわからない、私にとっては。
自分が同じ墓に入りたくないために殺人までして村八分どころか村十分になるという心がよくわからないのだ。田舎で昔だからか。現代の都会に住んでいる私には、一緒の墓に入りたくない思想がよくわからないのだった。

・目撃者はいなかった
営業成績を間違った注文から上乗せされて褒められまくった営業マン。
彼がそれを糊塗しようとしてさらに深みにはまっていく・・・


ドツボにはまるってこのことか。
運が悪い男ともいえるけれども。
自分で発注したものを自分で買い取る、ここまでは誰もが考えるだろう。
でもその時にまさか偶然重大事故の目撃者になるとは。
彼がもしその重大事故の真相を話せば、彼の発注ミスが分かるというジレンマに。
それだけだったら、黙っているのを誰でも取ると思う。
けれど、その時刻に別の場所で放火があり、そこに彼の姿が見受けられたという警察からの追及が・・・

何かを証明するためには何かを犠牲にしなくてはならない、はまり込んでしまった男の悲劇が読んでいて面白い。


・ありがとう、ばあば
これは微妙・・・・
ばあばの方の気持ちはよく分かったが、孫娘の気持ちが今一つ文章から読み取れなかったのだった。

デブだった孫娘を痩せさせしかも子役としてデビューさせるおばあちゃん。
ところが、彼女は孫娘によって極寒のバルコニーに締め出される・・・・


孫娘、この子は本当は子役をやりたくなかったのか、ここがよくわからない。
あと「死ぬところを見たかった」のではないのか、そうすれば演技に幅が出るから。
私はそのように思っていたのだが最後の孫娘の話は違っていた、単純に年賀状を出さなくて済むからか(自分の汚い時代の顔が入った年賀状を)


・姉のように
大変面白かった。
面白いので最初から二度読み返してみたが、よく出来ている短編だと思った。
いわゆるミスリーディングなのだが。

最初に新聞記事が出る。
仲の良かった姉と妹のやり取りが途中に入ってくる。
そしてラスト・・・・驚いた、本当に驚いた。

→最初に出ているのが名前が出ていない。そしてそのあとから事件のことが「妹夫」と「妹」とともに語られる。
だから、どうしたって、最初に出ている子供を突き落として殺した、というのがこの事件だと思う。
途中で何度か違和感はあったのだが。
違和感の最大は、妹と娘がママ友に招かれていったときに、財布がなくなった事件だった・・・いくら殺人犯の妹とはいえこれまで・・・?と思ったし、その前に殺人犯の妹をこのような場に招くだろうかという疑問もあった。

尊敬していて絵本作家までしていた姉に何でも相談していたのにその姉が警察に捕まってしまって相談できないというジレンマに陥っている妹。
そしていうことを聞かない幼い娘。
自分は犯罪を犯した姉と同じ家に育っていたのか。
この葛藤が妹のイライラに繋がっていく・・・・
そしてラスト!
お見事というしかない。

ラストの別の新聞記事で、絵本作家の姉が「窃盗」をしたというのが出ている。
ということは、最初の階段から我が子を突き落とし殺し、それまでも虐待していた、という記事は妹だった。
時系列が逆だったのだ、新聞記事の。


・絵の中の男
中にも出てくるけれど放火→絵を描くというので当然芥川龍之介の地獄変を思う。
ここには全く別の真相が・・・