評価 5

面白かった。
この三部作をずうっと読んできて、これが一番衝撃度の中の残虐さが薄いと思った。
最初の殴る蹴るシーンと仲間内の指落としシーンぐらいだから。
けれども、その分カミーユ警部の心のうちというのに食い込んでいくことができる。
残虐シーンが多いと、あいたたたた・・・とそこに目が行ってしまうから、心の中という方になかなかこちらも行かないのだ。
あとこの物語を楽しむには、前作2作は読んだ方がいいと思う、というか必須だと思った。
たまに読まなくても別に大丈夫というミステリがあるけれども、とても重要な前作2作になっているから。

過去に失ったものがあるカミーユ警部が立ち直りつつあるときに、またしてもどん底に落とされる、で始まるのがあまりに痛々しい。
彼がそこから雄々しく立ち上がる姿にぐっときた。
体が非常に小さい、背が低い、というのは前の本でわかっているのだが、ここでもそれは随所に出てきて、なぜ自分のような男にこんないい女性がついてきてくれたのか、自問自答しているところとか、自分より大きなものに常に見上げて頑張るところとかも誠に可愛らしい。
絵を描くのが上手なカミーユ。
女性に優しいカミーユ。
記憶力抜群のカミーユ。
非常に繊細なカミーユ。

カミーユ警部が付き合っている女性アンヌが、宝石強盗のとばっちりを受け、重傷を負った。
それは顔を破壊されつくすほどの重傷だった。
それを知ったカミーユはアンヌを見舞うと同時に犯人検挙に乗り出すのだった。
知り合いが捜査してはいけないという規則を曲げてまで総動員で犯人を割り出そうとしていくのだった・・・


今回、カミーユ警部の逆上の暴走という感じで始まる。
なぜなら自分の愛した女性アンヌが偶然強盗のむごい標的になってしまったから。
しかも彼女がなぜそこにいたかというのが、あとでわかってきて、それがカミーユへのあることだというのもわかってますます逆上する→彼へのプレゼントを受け取りに行くところだった、名前入りの時計を。

途中、誰だかわからない犯人がじいっと裏でほくそ笑んでいる姿が出てくるきてここもまた興味深い。
病院入りになった重症患者のアンヌがひたすら誰か襲ってくる人がいるのに怯えている姿も哀れだし怖い。
それに対してカミーユが暴走しまくり自分が知り合いということを隠してアンヌの事件にかかわって捜査していく姿もどきどきはらはらする。
窮地に自らを追い込むカミーユの姿にもどうしたらいいのだろう・・・と不安がかきたてられる。

が!
すごくすごく目を凝らしていたのだが(なんせ前作二作で驚愕させられたので)全く分からなかった。
まず258ページで、ええええ!
そのあと続く捜査の過程で、えええええ!
更に281ページで全てが解けて、えええええええ!なんてこったい!

侮れず、ルメートル!

私は最後の場面でちょっとうるっとしたのだった・・・・カミーユ!!!

以下ネタバレ
・アンヌは偽名で勤めている場所もすべて嘘だった。
そして殴った相手とは仲間であって、つるんでいたのだった。
黒幕は、イレーヌ事件で警察に勤めていたかつての部下のマレヴァルだった。
刑務所を出所した後、悪の道に走っていた。
カミーユを追い落とすと同時に、奪われたお金を持った自分の仲間の一人を探し出すため使ったのだった。

仲間の一人は、宝石専門プロの強盗、ヴァンサン・アフネル。
彼は偽名で妻子とともに暮らしていた、奪ったお金とともに(ヴァンサンは癌で余命いくばくもなかった)

・何度も回想場面が出てくる、皆で捜査したという時代の。
そこがとても美しい思い出であり、またイレーヌが結果的に死んでしまうので辛い思い出でもあるのだ。

・おしゃれな資産家ルイがちょっとしか出てこなくて寂しかった。
けちな(でも出すところは出す)アルマンに至っては死んでいるし、マレヴァルもいないし。
だから、これはチームの物語ではなく、それは昔の話で、カミーユ一人の奮闘物語、でもあった。

・アンヌが偽名で嘘をついていた、ということがわかってもまだ、カミーユ警部は心に彼女の面影を持っている。
最後の場面で家に明かりがともっているのを見て、アンヌがいるのではないか、とふと期待したりする姿が泣けた。