2016.11.11 秘匿患者


評価 4.9

思いがけず面白い本だった。
A級ミステリかと聞かれればそうではないのだけれど、全体の話のかわし具合みたいのが私の好みだった。
そしてあるところで、私の驚いたことと言ったら!
なんとなくなんとなくあれ?と思ってはいたものの・・・・
そして読み終わった後、誰かと話し合いたくなるような本の一冊だった。


・・・・
メリーランド州の精神科医療施設メーカーは、犯罪を犯した心神喪失者を主に収容している。
ここに、ジェイソンという一人の男の患者が送り込まれてくる。
担当医はリーサ。
当初からジェイソンの履歴がないので不満に思っているのだが、上司に聞いても取り合ってくれない。
そしてジェイソンの過去の断片を聞いていて、それをつなぎ合わせる作業をしている多忙な日々を送っている・・・・

リーサが精神医療のチームのトップにいくら聞いてもジェイソンの素性は杳として知れない。
ここに何か陰謀があるのか、とリーサが考えるのも無理はない。
そして、リーサ本人の両親の亀裂もリーサの独白でわかってくる、患者を診る側のリーサ自身も過去の自分を探ってはいたのだった。
毎日判で押したような日々のリーサ。
彼女がいつもいく朝の喫茶店ではダイエットしているので、コーヒーとともに毎朝くれるおまけのピーナッツをこっそり捨てることすらも日課となっている。
またマージの店という、近所の人が集まる輪になったくつろぎのダイニングもリーサの緊張の日々の一つの救いになっている(ここには常連さんがいていつもリーサに温かく声をかけてくれる)

一方でジェイスンの性癖も徐々にわかってくるのだ。
悲惨な体験をしたということもわかってくる。
全てが謎に包まれたジェイソンがなぜこの精神の医療施設に入れられたのか・・・・

途中、非常に意外な展開で、リーサが巨大なる陰謀に巻き込まれる。
FBI、CIA、と出てくる言葉も物々しい。
ここから活劇が始まり、二人の人間がかかわってきて、敵味方入り乱れての冒険小説の趣になってくるのだ。
ヒッチハイクで助けてくれる人がいたり、一瞬的かと思った人が実は味方だったり、味方と思っていた人が敵だったりと目まぐるしく状況は変わる。
前半が静だったとすれば、後半のある部分までは完全に動。

以下ネタバレ

・実はジェイソンはリーサの弟であった。
そしてリーサこそがこの病院に入れられ医師であるという妄想を抱いている患者であった。
ジェイソンは、姉を助けるべく記憶を呼び戻そうとしてここにやってきている。

・リーサの毎朝行っていると思っていた朝のダイニングは、病院で薬を渡す場所だった。
紙コップのおまけのピーナッツなどは、投薬で、それをリーサは飲まずに捨てていた。

・マージの店、は、患者たちが集う食堂だった。
いつも声をかけてくれている常連も、患者たちだった。

・リーサは自分の家に戻っている、と思っていたが、それはこの施設内の自分の部屋だった。

・リーサがしたことは、ジェイソンが学生の時にゲイだということを人に知られこてんぱんにいじめられそうになった時に人が変わったように彼らを叩きのめしたこと。
そしてジェイソンが長じて良き男性のパートナーを得たのだが、リーサは彼を殺してしまった。

・リーサの妄想の中で出てくるダリルリンダーとエアロン・レミーはFBI捜査官ということになっているが、彼らはリーサの飲んでいる薬の名前から来ていた。

(一つ、ここを裏付けをしてほしいと思ったのが、逃げている最中(妄想だが)ヘイデンという男が出てくる。
彼は最終的に守ってくれて死んだということになっているが(妄想で)、彼が何から発生して出てきたのか、そこを描いてほしかった)

・リーサがすべてを受け入れて治った、と最後のほうで思ったのだが。最後の二ページでリーサは医者になっていたので、やはり彼女は永久に治らないというのが示されていた。