2016.11.24 罪の声


評価 4.9

ともかくも圧倒されたのだった。
グリコ森永事件をそのままトレースし、ノンフィクションとフィクションのはざまで綱渡りをしているような小説だ。
キツネ目の男、どくいりきけんたべたらしぬでの脅迫文、社長の誘拐、食品会社6社への脅迫、となんとも印象深い昭和の事件だった。

これは小説仕立てになっている。
真相がわかった時に、ぐっときたのだった、この場合の真相とは、事件の背景とかそういうことではなく、『テープに声を吹き込んだ子供たちのその後』という意味だ。
犯罪に子供が使われている。
そこに目を向けた小説でもあった。
一人は最初から出ていて、ひょんなことから自分がまったく覚えていなかったのだが、家にあるテープの一つにどう考えても小さい頃の自分の声が吹きこまれているのを発見する。それが昭和の大事件とリンクしているというのに気づくまでには時間はそうはかからなかった。
これが京都でテーラーを営む曽根俊也だ。
彼側の視点と、もう一つは取材ということでこの事件を追っていく新聞記者の阿久津の視点で物語は進んでいく。

大企業を卑劣なそして単純な方法で脅迫したという事件、しかも社長が誘拐されたという事実、更には警察の失態が途中であったという事実が厳然としてある。
更に付け加えたいのは、子供向けのお菓子に毒を入れたという特殊性、があり、上記したように子供の声を使った脅迫テープというように、常にこの事件は子供が絡んでいる。

ただ・・・・
圧倒はされ、感動もしたのだが、実際の事件だけに、もどかしさは残った。
全てを仮名にしなければ小説にはなりえないので仕方ないのだが、あちこちで、これはこれね、と頭で変換して読むもどかしさがあった。
私は、ノンフィクションが読みたかったのだろうか?
それともこれをノンフィクションとして、読みたかったのだろうか?

以下ネタバレ

・株操作・・・

・泣けたのは、この脅迫テープを全く忘れていた(幼かったので)側は普通の生活ができている。
一方で対照的にもう片方側の姉弟は、父親の問題もあり、テープが一生を変えている。
この通訳の夢を持っていた姉の姿に涙が出た。同時に最終局面で弟と施設にいる母親の再会にも。