評価 4.9

江戸川乱歩の作品をモチーフとした作品群だ。
どれもとてもよくアレンジされていたと思った、いかにも現代風に。
現代であるからITが使われている。
たとえば、押し絵と旅する男は、あるものが使われている。
それで、情緒とか原作の不気味さは消えるのだけれど、それでも今度はITの持っている怖さというものが増長していくような気がした。
・原作「人間椅子」「押絵と旅する男」「D坂の殺人事件」「お勢登場」「赤い部屋」「陰獣」「人でなしの恋」「二銭銅貨」
・今回の作品 椅子?人間!・スマホと旅する男・Dの殺人事件、まことに恐ろしきは・「お勢登場」を読んだ男・赤い部屋はいかにリフォームされたか?・陰獣幻戯・人でなしの恋からはじまる物語

この中で一番最後に驚いたのが、陰獣幻戯のラストだ。
途中で、何度も執拗に書かれている一文が(なんでこんなに何度も書かれているのだろうと思ったくらいに)伏線になっているのだ、とわかったのだった。→ストーカーのように追い続けていた女性と思っていた人は実は男性だった。何度も執拗に書かれていることは「女という性が好きで好きでたまらないのだ」というところ。男には全く興味がないというところに妙がある。

椅子?人間!は人間椅子とあとやや屋根裏の散歩者をモチーフとしているけれど、これって現代の話になると確かにストーカーの話っぽくなる。というか、乱歩の話、現代になるとストーカーとか倒錯者とか名前が付けられるものが多いような気がする。
それで、これは昔の男が突然メールで脅迫し始める話だ。
これって、途中で割合結末が読めてしまう感じの話だと思う、私ですら読めた。
しかしこの原作以上の(原作は陰惨ではないから)陰惨なことといったら・・・→ソファにいるというのを真に受けて、包丁で錯乱して殺してしまうがそこにいたのは捕らわれていた夫だった

スマホと旅する男はちょっと怖い。怖いが、乱歩の怖さとはまた違った怖さだ、なぜなら機械(スマホ)が入っているので、ぞくっとしたなんだかわからないぞ、という怖さはなくなっているのだ。でも一方でこの乗り物の不確かさもあるし老婆の不思議さもある。結局わからないのだ仕組みが。でもそれが機械になっているので、怖さ軽減という不思議さがあった。
そしてラスト、これって意外な展開だった・・・→ホログラムを作る人がいるって・・・。女性を殺してAIにしてスマホに取り込んだという告白がある。

Dの殺人事件、まことに恐ろしきは、は、とてもよくできたミステリだと思った。
賢いが生意気な少年・聖也の造型がよくできていて、しかも薬屋の女性が殺されたという事件を偶然目撃してその犯人を割り出しているのに・・・
途中の展開もわくわくするし、出入りの人がいないのにどうやって殺されたんだろう、という謎が残っている。
徐々に推理を展開しこれは違うこれは違うとつぶしていくのだが・・・
ラストへの崩壊感がたまらない→聖也が犯人だが、ラブホ街であるために、一緒に調べている本人は聖也に脅迫される、逆に。

「お勢登場」を読んだ男
これは悪女物(原作が)なので、これまたラストが読めた。
ここにもスマホを使っていかにも現代のITを駆使というところか。
助けを求めた妻は夫を殺害しようとしてあらゆる手段を講じて、スマホを使えなくする、衣装ケースに誤って閉じ込められた夫からの助けを無視する形だ。閉じ込めるのが長持ちの代わりに衣装ケースか・・・

赤い部屋はいかにリフォームされたか?は、原作が大好きなだけに、どうアレンジするのかなあと思ったが、とても面白かったと思う。
劇を見ているという設定にしてそこで殺人事件が起こる、どこまでが演出なのかどこまでが本当のことなのか観客もよくわからない、この状況って今でもサプライズという形であるのだろうし実際やっているところもあるのだろうなあと想像できる。
そしてラストの不確かさ・・・→最後の殺人事件が本当かどうかわからない・・・そこまでが実は!という嘘だっただけに誰もが疑っている。

人でなしの恋からはじまる物語 は、暗号ものだけれど、最後ほっこりとする。なぜなら心が通っていない夫婦がかわっていく話だから。