2016.11.30 生か、死か




評価 5

このミステリの謳い文句
「なぜ脱獄した人は、あと一日待てば自由も金も手に入ったのに脱獄したのか」
というのがある。
けれど、それは重要ではあるけれど、そして核心もついてはいるけれど、謎解きよりもその謎の背景というのに胸を打たれたのだった。
究極の恋愛物語でもあり、また過去場面で美しい父と兄との懐かしい情景もある(釣りの場面があるけれどこれがあとあとでのオーディの願望にもなっている、自分もやってみたい、という)。家族の物語がここではとても美しい。

しかも途中で何度かあることの伏線がある。
それなのに私は全く気付かなかった。
かすかな違和感があり、なぜ?とはちらっと思ったものの。
ラストのほうで、まさかの真実が転がっていた・・・

なんといっても10年の刑に服したオーディ・パーマーの人間性がとてもよく描かれている。
これは、同じように刑に服している黒人のモスによっても克明に描かれていてそこもとてもわかりやすい。

4名死亡の現金輸送車襲撃事件、その共犯として10年という刑に服した男オーディ・パーマー。
彼が奪った700万ドルは行方知れずになっている。
刑務所内で、彼は看守もだが刑務所内にいる男たちから壮絶な拷問を受ける。
が、生き延びてしかも何も語らない。
この姿に同じ房のモスは感心するのだった・・・・

この事件そのものに疑問を持ち始めたのが背の低い女性FBI特別捜査官のデジレーだ。
モスはひょんなことからオーディを追う立場になるのだが、それでも彼の刑務所内でのオーディへの気持ちが根底にあるので、全てを疑い始める。

ここにドレイファス郡の保安官ライアン・バルデスが加わり更には、オーディの上司のフランク・セノーグルスが登場してくる。

脱獄途中で知り合ったキャシーとスカーレットという親子連れがいる。
彼女たちの運命もまた過酷だ。

過去場面と現在とが違和感なく融合していて、その過去場面の恋愛の話が、最初は引き込まれなかったのだが徐々に引き込まれ、オーディの人となりがわかってくるうちにさらに引き込まれていく。愛するということがこれだけのことを・・・・
オーディが日本でいう、『義』を重んずる人間なので、そこがぐっと心をわしづかみににされるのだ。
またモスの存在も大きい。
最初のうち、オーディを追うという条件で出してもらうものの、途中でどうもおかしいと自分で判断する、その判断の基準は、「オーディがこんなことをするはずがない」という刑務所にいるときの彼を知っている者ならでの考えだった。

・・・・・・・・・・・・

ラストのところで映画を見ているようだった。

以下ネタバレ
・無実の罪で捕らわれた男オーディ。
彼は、かつてボスであったナイトクラブの経営者アーバンにひどい扱いを受けていた彼の妻、ベリータと電撃的な恋に落ちてしまう。
彼女には以前息子がいた。
その息子を引き取り三人で逃避行をしているときに、運悪く現金強奪に会う。

そしてベリータは死亡。
オーディは奇跡的に生き残る。
そして、その時にちょっと離れたところにいた息子ミゲルは、孤児としてバルデス(彼が黒幕)夫婦に引き取られマックスという名前になったのだった。
ミゲルを守ってくれというのが愛するベリータの最後の言葉だった。
なので、彼は全力で彼を守ろうとする・・・・

・マックスに最初にあった時にマックスはミゲルなのだがすべてを忘れている。
そしてオーディは声をかけるのだがその部分、後から読み直してみるとそれはそれは意味深長だ、悪い男につかまった女性がいた(それはお前の母親ベリータ)。

・最後のところで、モスが刑務所にいるのでオーディが訪問した際、刑務所の人たちが拍手をする場面映画を見ているようだった。