2016.12.09 拾った女


評価 5

ものすごく驚いたなんてもんじゃない。
でもどんでん返しというのとはまた違った、ああ・・・そうだったのか・・・と染み入るような驚きだったのだった。
最後まで読むと必ず全部読み返したくなる。
そしてここはああだったのか、とかここはこうだったのか、と新しい目で読むことができるそんな一冊だった。

話は全体にはノワールだ。
サンフランシスコの夜に、一人の小柄なブロンド美人がカフェにやってくる。
彼女は文無しでハンドバッグをなくしたというので店のハリーが探してあげて・・・とここから話が始まるのだが、二人して酔いどれだ。
しかも二人してお金がない。
美女はヘレンと名乗り、とびっきりいい女であることに間違いはないのだが、お金がないしアルコール中毒だ。しかも読んでいると結婚しているということがわかってくる。でもでもとびっきりいい女・・・・
ヘレンを愛しているハリーの切ない気持ちが伝わってくる。
どうしても手放したくないヘレン、でも目を離すと何をやらかすかわからないヘレン。
子供のようなヘレンの無邪気な奔放さにひたすらハリーは振り回される。
どちらも究極にお金がないのでどうしようもない実態があり、何とかしようと思ってもヘレンがすぐに飲んでしまうのでこれまたジレンマなのだ。

途中二人して精神病院に入りアルコール中毒を直そうという場面が二度ある。
そしてヘレンのお母さんがヘレンを心配してやってくる場面もある。
どちらもとても印象深い場面だ。
そしてお金を稼ぐために、男のハリーはいろいろな職業についてはやめ、ついてはやめ(ヘレンの様子を見守らなくてはならないので)する。
ダメ男とダメ女の堕ちていく話・・・・・は途中で実に意外な展開を迎える。
これも仕方ないのかなあ…・とは思ったのだが・・・・
そしてラスト二行!

以下ネタバレ
・ハリーは黒人であった。この視点を持って全編読み直してみると、この時代の黒人男性と白人女性のカップル、であり、ヘレンのお母さんが虫けらを見るよう見ていたのは、お金がないからアル中だからと思っていたが、黒人ということもあったのだ、きっと。
192ページからのピアノの黒鍵と白いところの部分の話は、黒人と白人の比喩なんだろうか。

・ヘレンは最終的にハリーに殺された、と思ったが、実は違っていて心臓がお母さんの言うように弱かったのだった。