評価 4.9

ロシアのジュール・ヴェルヌと言われる著者のSF作品だ。
長年手元に置きたかった本が文庫で復活という喜び・・・だったはずが、中盤まで動きがない(ほぼ研究室)ので、やや途中で失速したといっていいだろうか。
そして途中から外に出る場面から動きが激しくなりこのあたりから面白くなる、かなりかなり目をそむけたくなるような話であるには違いないが・・・。
再読してもその感想は変わらなかった。

パリのケルン教授にやとわれたマリイという若い女性。
母一人子一人のマリイはそこで教授の手伝いをしようと張り切るのだが・・・
そこで見たものの秘密を話さないようにと厳命される。
そしてそこで見たものは
人間の生きている首だった・・・・


タイトルがドウエル教授の首、なので、彼の首があることは予想していたけれど、まさかほかにも二つも首があるとは!
そこにまず驚いた。
そして最初からしゃべるわけではなく、どちらかというとしゃべってはいけない細工をされていて、マリイが機転を利かせてパイプを開かなければしゃべることすらできないという悲惨さだったとは!
でもマリイはそのことをしたがために、ケルン教授の悪行を知ることになる。
マリイは善意の人なのでなんとかなんとかこれを改善したくなる。

しかも残り二つは純朴な若者と年を食ってはいるが美人の女性の首だった。
女性は特に体をもとに戻してほしいという願望が強く、どうにかならないかと騒ぎ続けている。
途中まで全くこの研究室というか実験室から外に出ない。
出るのはマリイのお母さんとの家の場面ぐらいで・・だから場面転換がなくてやや息が詰まる。

ところが、途中から女性の首から下に別の死体の体がつく、という画期的な出来事が起こり・・・というところからいきなり外になっていく。しかも娯楽の場・・・
このあたりから読ませる。
とてもとてもグロテスクだが。

後半ドウエル教授の息子たちも加わって、活劇のようになってくる。
いかんせん、首が動かせない、動けないのでそこは仕方ないが・・・
ケルン教授のしたことは首を仕立て上げるということのみならず、、ドウエル教授の手柄を横取りする、という基本的なこともあったのだった・・・

・・・
なんといっても首。
首が話すという奇妙さ、そして首のみ生き残っている不思議さ、に加えて、後半女性の首から下にくっつけた足が壊疽で腐ってくるという理不尽なグロテスクさ。
なんだか酸鼻を極めているけれど、でも読ませる。

途中、歌手だった女性の声で、自分が元好きだった女性の体をこの人が持っているということに男性が気付く場面がある。
いったい何が好きなのか。
体なのか顔なのかそれとも声なのか、魂なのか。
このあたりの問いかけも哲学的で興味深い。

・・・・
そして最後の解説でまた驚いた。
実際にこのような実験があったのか???と(犬の話)
1968年当時の解説で、10年前と言っているので1958年のことなのか・・・