評価 4.8

古典部シリーズの最新刊だ。
奉太郎、える、里志、摩耶花、懐かしの面々が登場する、ちょっとした校内外の謎とともに。

今回読んでみて、ミステリ部分が光るよりもそれぞれの人物が描けていたように思った。
皆の過去がわかっていくところが読ませるし、未来に向けての話も読ませる。
特に折木奉太郎の省エネ体質になった根源のこと、が明らかになったところが読んでいて面白かった。
やらなくていいことならやらない、やらなくてはいけないことなら手短に、の奉太郎にこんな過去があったとは!
自分が相手に都合よくつかわれていたという認識が出た。
全体に、これまでの古典部よりずうっと私は好きだった、たとえすべてのミステリがおちなくても。
(おちない部分が多々ある)

わたしたちの伝説の一冊の中の走れメロス、の奉太郎の解釈も楽しい。
実に彼らしいというか、視点がここに行くか!と改めて思わされて走れメロスをもう一度この視点で読み直したくなる。
そして私はこの話、とても好きだった。
漫画研究会の小さな世界でのあれこれと、本当に一般社会に飛び立とうと思っている者との齟齬が見事に描かれている。
小さな世界で甘んじるのと選ぶということ。
外に飛び出し、小さな世界との縁は切れるけれども外に飛び出し新たな自分の可能性を信じて生きていく困難さを選ぶということ。
この二つでどちらを選ぶかという究極の選択がなされるのだ。
先輩の言葉の一つ一つが身に沁みた。

長い休日の中のえるがいった言葉が突き刺さる。
「でも折木さん、わたし、思うんです・・・・お話の中の折木さんと、今の折木さん。実は、そんなにかわっていないんじゃないか、って」
これに物語のすべてが集約されていると思った、えるは見通しているのだ、折木の心持ちを。

また表題作は、なぜえるが突然合唱祭に現れなくなったのかという謎だ。
これも謎自体はそれほど大きくない。
けれど、決断を迫られる場面が最後に来る、さあ、どうする、千反田える。
彼女の決断は次作以降に持ち越される・・・

連峰は晴れているか、は
三回雷に打たれたことのある中学校の教師が、ヘリの音に気を取られた一瞬の話だ。
雷とヘリ、このあたりで彼に起きた出来事、かれの心の中を推測する奉太郎。
(ただ・・・この話、私の中で落ちていない。
なぜ、笑ったのだろう?遭難して捜索された二人に何かうらみでもあったのか?)