評価 4.9

まさに恩田陸そのものの世界だった。
少女、不思議な世界、そこに至るお約束事、美しい風景・・・・
児童書レーベルの話だが挿画も酒井駒子であり、美しい装丁で(函もまたとても美しい)それもまた痺れるのだ(ちょっとこの物語には子供たちの姿が幼すぎる画、というのは除いて・・・)
同時に八月は冷たい城、が出たのだがどちらから読むかちょっと悩んだ。
悩んだ末に、月の順番に、と思いこちらから読んだが・・・これが正解だと思う。
謎が持ち越されて、八月の方で解き明かされるので、八月を読んでいたら半減するだろう、魅力が。

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夏流(かなし)という坂道と石垣が多い町に引っ越して来たミチル。
中途半端な時期だけに誰も友達ができないまま夏休みへの終業式を迎える。
緑色の目をした『みどりおとこ』から夏のお城への招待状を受け取った。
呼ばれた人は必ず行かなくてはならないらしい。

6人の少女たちとの夏流城での林間学校が始まる。
濃い蔦に覆われた古城で共同生活を始めるミチル。
そこは外部と完全に遮断された世界でもある。
そして・・・


いきなりみどりおとこ、が出てくるので何?これは?と思う。
みどりおとこのなぜか悲しげでそしてちょっと不気味なその姿に怖さを通り越して笑いすら漏れる。

そして唐突に6人の少女たちが集められそれは絶対に行かなくてはならない林間学校らしいというのにも?と思う。
けれど、疑問にあれこれ思いつつも徐々にこの世界に引き込まれるのが不思議だ。
城に3つのルールがあり、鐘が一度鳴ったら食堂集合、三度鳴ったらお地蔵さまにお参りする(お城なのにいきなり日本的なお地蔵さまが!というところでも度肝抜かれる)、そして水路があるのだがここに花が流れたら色と数を報告する義務がある、ということだ。
一体なぜ少女たちは集められたのだろう?
なぜそして家で黙認されているのだろう?
なぜ複数回来ている子がいるのだろう?
なぜ町では何もこのことが問題にならないんだろう?
そもそもみどりおとことは誰で何なんだろう?
なぜ三回の鐘でお地蔵さんに行くのだろう、それも全員が。
花の色と数とはなんだろう?

みちるが最大にわからない人で、彼女の視点が一番読者と同じで寄り添ってくれる。
他の子供たちは、とてもよく理解していること、うっすらとでも理解している子に分かれるのだが、それでも何らかの情報は入っている子が多い。
それならば、なぜみちるは何も知らされていないのだろう?
この話の中のルールも一切わからない状況だ。

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最初の語りだしから後半に至るまで、頭が疑問でぱんぱんになる。
不穏な雰囲気が続き、城の雰囲気、女子寮のような女子たちとの謎めいたやり取り、が続き、途中で女の子が失踪する・・・という更なる謎が・・・・
出てきた少年はいったい誰で何だったのか、というのが八月~に繋がっていく・・・
表女子バージョンが七月だったとすれば、裏男子バージョンが八月だ。
八月を読むときにはこれはこうなのね・・・とわかりながら読むのでそこは七月とは違った読み方ができる。
八月~で一気に全ての謎が氷解するのだった。

このような繋がり方があるとは!

話そのものは、荒唐無稽と言ってしまえばそれなのだが・・・
何しろファンタジー世界だから、何でも起こるのだ、ここでは。
不気味な雰囲気で始まり謎が謎を呼び、それがこういうことだったのか!と氷解する時のすがすがしさと言ったらどうだろう。


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(付記)
みどりおとこは、『朝日のようにさわやかに』の中の淋しいお城に既出。