評価 4.9

こちらは少年たちグループだ。
七月~のように、夏流城(かなしろ)の林間学校に初めて参加する男子、光彦(てるひこ)中心に描かれる。
(彼は、ひそかに七月の少女の中の一人蘇芳と連絡を取っているというのが七月を読んでいるとわかる)

二年ぶりに再会した卓也、
大柄で穏やかに話す耕介
勝ち気ではきはき物を言う幸正が同じところにいる。
4人の男の子たちが死と向かい合うというところで、スタンド・バイ・ミーを思ったりする。
七月よりもこちらの方が陰惨であるし、ホラー色が強いと思った、そこも含め好きだが。

この話、男子同士が(本当にこの人はこの性格なのだろうか?)と人間を疑っているところもある。
要は疑心暗鬼になっているのだ、耕介がおっとりしているのは本当なのか?とか、幸正はかつてここを訪れたことがあるらしいがそれについて何も語らないのは何故か、攻撃的なのは何故か、とか、幼馴染の卓也は幼馴染の頃のままなのか、とか、疑問は常に付きまとっている。

・・・・
いきなり到着のところで首を折られたヒマワリが四本並んでいる。
これは何を示唆するのか、しかも集められた少年たちが4人・・・どうしても自分たち?と思うだろう。
ここからして世界が尋常ではない世界に向かっているのがわかる。

ここからは、お地蔵さんに集まるとか花とか女子バージョンの七月と同じことが起こっていくのだが、読む側はこれが何かわかっていながら読んでいる、だから余裕をもって読んでいるはずなのだが・・・
こちらの八月の方が怖いのは、光彦の不安がどんどんどんどん加速して増していって、またその不安がこちらに伝わってくるからだと思う。また禁忌と思われることがいとも簡単にさらりと触れられているみどり男の真相もまた衝撃的だ。

茂みの奥に鎌を持ったものを目撃したところから、また普通ではない世界が広がっていく。
彫像が倒れ危機が生まれ、鎌を持った者がいるらしくそこでも危機感が生まれ・・・
ある誤解が生まれるのだが・・・ここもとても緊迫した場面だ。
人の死がかかわっているから。

誰を信用したらいいのか。
誰が本当に悪い奴なのか。
そもそも悪い奴はいるのか。
この物語、疑心暗鬼の物語ともいえよう。

以下ネタバレ

・子供たちは緑色感冒にかかって隔離されている親の死亡が近いと城に集められる。
シェルターと病院は城の下にある。
地蔵のところに現れるのは、その親と対面する最後の機会で、マジックミラー越しに子供たちに会うことができる。
出てくる番号は、自分の親の番号。

・流れていく花は、国内で緑色感冒で死んだ人。
男は白、女は赤。

・みどりおとこは、世界に緑色感冒のパンデミックが起こる。
サバイバーたちは人を食べて生き延びる。
死にゆく人と、「夏の人」が対峙し、強いほうが弱いほうを食べる。

・全てが、このSF的世界(パンデミックが起こった世界)の出来事というのが惜しいような歯痒いような。
これで落としどころは出来たのだけれど、なにがなにやらわからないままの世界でもそれはそれでよかったのではないかとないものねだりを。