評価 5

とてもとても面白く興味深い本だった。そして全編堪能したのだった。
最初のうち、残された物を通してブロンテ姉妹を語るだけなのか、と思っていたが、どうしてどうして。
物は確かに通しているけれど、物語の細部に至るまで読み解いてくれて、こうだったのか!とかこういう意図があったのか!とか、こういう思いがあったのか!とか、背景がこうだったのか!という新しい視点をもらったのだった。
またブロンテ姉妹だけではなく、その筆はウルフとかフィッツジェラルド、ディケンズ、テニスンといった人たちにも言及される。
そこも非常に面白いし、関連付けが見事だ。
姉妹で世界文学の二つを輩出しているという奇跡。
それを改めてこの本で感じた。
出来得るならば、この本を片手に、もう一度嵐ヶ丘とかジェイン・エアを読んでみたいものだ。

嵐ヶ丘、ジェイン・エアは読んでいないと実際にこちらを先に読んだらその魅力が半減するだろう。
読んでいたら、ああ・・これが!この箇所が!と感動するだろう。

(以下、嵐ヶ丘、ジェイン・エアの内容に触れます)

犬に対する記述がある。
犬がどちらにも出てくるけれど、特に嵐ヶ丘で実に印象的な出方をしている。
実際に彼女たちが犬を飼っていて、当時の犬への考え方とヒースクリフの犬から成長した悪魔のようなものへの変貌の解説の第四章は読みごたえがあった。
犬以下だったものから、今度はヒンドリーを犬以下で扱うヒースクリフの様子が手に取るようにわかる。
犬の描写も確かに小説に多いなあと改めて思った。

第五章のシャーロットの親友への手紙の話もまた読ませる。
親友エレンへの膨大な手紙・・・(これはジェイン・エアの前半生で親友で死んでしまったヘレンを確かに思い出すし、女性同士の愛というのも感じる)
また、自分の師への一方的な恋文(妻帯者であって妻がこの手紙を読んでいたという顛末・・・でもそのおかげでこの手紙が残ったという皮肉・・・)も忘れ難い。
この時代に、郵便がとても高かったこと、には驚いた、だから、暗号のように紙を使って文字を交差させて書いていく技があったとは!(ついでにいえば、中身を見て抜き取る郵便員がいるとは・・・)

第七章の死が作ったもの、はエミリーの死の場面で読むのが辛い。
辛いけれど、死んだ人の髪の毛を残す、これって私たちには発想できないことだ。
ヒースクリフがキャサリンの墓を暴き自分の髪の毛をロケットに入れる場面はあまりに狂気じみていて印象深いのだが、ここも、『死んだものと自分の一部が一緒に横たわる』ことに官能的だと感じるというのも驚きだった。