2017.03.14 地中の記憶


評価 4.8

過去と現在が交互に語られるミステリだ。
そして時を隔てての町の記憶の物語でもある。
最初が非常に難しい、とっかかりとしては。
なぜなら、どれがどう問題なのか、よくわからないからだ。
アニーという屈折した少女が死んだ人間を発見するけれど、これはそもそも殺人事件なのか。
アニーを魔女のように思っている周辺の人たちはいったい何なのか。
アニーの家族とはいったい何なのか。
このあたりがぼんやりしているので概観がわからない。
また過去の章に入ってくると、この現在の章と同じ人が(当時も今も生きている人)出てきて更に混乱していった。
が。
ある時点で、こういうことだったんだ!!とするするとベールがほどけていく。
ここがとても面白いと思った。
ジュナのキャラクターが忘れ難い、魔女のような扱いをされているのだが、性に奔放であり生きることに貪欲な彼女が他人をなぎ倒していく生き方が心に残る。

・・・・・・・・・・・・・・
1952年の方では黒目の背の高い少女アニーが三人称で描かれている。
彼女がどういう立場にいるか、どういう感じの少女かというのが最初の方ですぐにわかるように語られていく。
もしかして彼女のことを気に入っているような行動をしている少年ライス・ファルカーソン(彼は保安官の息子、さらに言えば、ジュナの時代の女性保安官が祖母)がアニーの周りをうろついている。
ライスはどちらかといえば素直なのに、アニーは常に突っかかる。
このあたりの風習で、15の年に井戸をのぞき込みそこで顔を見た人と結婚する(!?)という行事も馬鹿にしている風情だ。
ところが、アニーはその実、夜に井戸に誰かの顔を見に行くのだった、好奇心に駆られて。
そこに妹のキャロラインもこっそりついていく。
ここで、思わぬ死体を見つけるのだが・・・
ここから過去への扉が開いていく。
屈折アニーと美しいキャロラインの対称が、そのまま過去のジュナとサラ(この場合姉だけれど)に繋がっていくところも興味深い。

一方で、1936年の方は、とりあえず「サラとジュナ」という姉妹の名前のタイトルが章のところについている。
でも語り手は「わたし」だ。
そのわたし、が誰なのかはすぐにはわからないものの、読んでいくと、ああ・・これはサラのことなのだな(姉)とわかってくる。
サラ、がそれでは、1952年の方ではいったい誰なのか、というのはまたこれがあとからわかってくるのだ。→サラはアニーの義理の母だった。ジュナは望まれている子供でもなく、最初からちょっと家族から距離を置かれている。
普通の少女だったサラは、予言者的な能力を持っているさらに気後れしているところもある。
ある種呪術的なジュナの存在が町全体に広がっていく。
ジュナは魔の存在であり、何かがあってジュナは数え歌になるほどの有名人だというのもわかってくる。

・・・
話がとても小出しに語られていくので、あるところで、(このことはアニーは知っているのか?)と思っていて、それが数ページ後で、(ああ・・知っていたんだ・・・)というのがわかったりする→自分がジュナ叔母さんと呼ばれている人の実の子供だということ。

ジュナが一体過去に何をしたのか、どういう事件があったのか、というのもまた徐々に語られていく、もどかしいほどに徐々に。
ジョゼフ・カール・ベインという人間が初めての公開絞首刑された時にかかわっていた人物がジュナらしいというのは比較的最初の方に出てくる、何しろ数え歌になっているくらいなのだから。
自分がその娘であるという自覚がアニーの中に確実にあるのだ。

過去の事件の中でのハイライトは、サラとジュナのひ弱な弟デイルがジュナと一緒にいた時に行方不明になってしまった事件だろう。
必死に探す家族がいる、町の人がいる。

ジュナ叔母さんがいつか来てくれるという期待。
毎年クリスマスカードをくれたジュナ叔母さんのやさしさ。
これが最後まで読んでいくと全く別のものに様相が変化していくのもまた読ませる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以下ネタバレ

・1936年のサラとジュナの中での「わたし」はサラ。
サラは1952年ではアニーの育ての母になっている。

・ジュナは、複数の男性と関係を持っていた。
そして、自分のおなかの中にいる子供は、絞首刑にされたジョセフ・カール・ベインの子供だと主張するのだった。
実際はその子は、地主のエイブラハムの子供。

・折り悪くデイルがいなくなった時に、遠くから帰宅したばかりのジョゼフ・カール・ベインが容疑者として連行され、彼からの自白をとった、と言われる。
その後、その自白の場からデイルは瀕死の状態で見つかり、けれど、そのあと回復に向かい、そしてそのあとジュナの看護の元再び悪くなり死亡してしまう。
加えてジュナのおなかのなかには子供がいる。
ジョゼフが全ての犯人だとされるのだった。

(デイルがいったんよくなってから悪くなったのは、ジュナの看護のせいなのだろうか?
デイルが記憶喪失の時はいいが、もし記憶が戻ったら自分とエイブラハムのことを知られてしまう。
ジュナは被害者を装っていたが、実は魔の存在そのものだった)

・生んだばかりの子供(アニー)をジュナはお父さんにどこかに連れて行ってと叫ぶ。
彼女は呪われているという言葉さえ吐く。
アニーをどうしても育ててあげたかったサラ。
それにかっとなったサラは、板でアニーを打ち殺してしまう。

季節ごとに届いたクリスマスカードはサラが作ったものだった。
サラは、アニーの母となったのだった(そののち、自分の子供キャロラインを生んだ)

・サラが昔好きだったエリスともジュナは関係を持っていた。
それにサラは衝撃を受ける。
そしてエリスを諦め、ジョン・ホールランと結婚するのだ。

・1936年のデイルがけがをしたのは、アビゲイルがたまたま強く彼を押してしまったことに起因するものだった。
デイルは、エイブラハムとジュナの密会を覗いていた。
そのあとアビゲイルが押してしまってデイルが大怪我をするのだが、そのことをジュナに話すと「これが父さんに知られたら、自分もエイブラハムも追い出されるのでやめてほしいと言われその通りにする。
ジュナのでっち上げでジョゼフは絞首刑になったのだ。