2017.03.20 がん消滅の罠



評価 4.4

余命半年の宣告を受けたがん患者が、生命保険の生前給付金を受け取る。
すると、その直後に病巣がきれいに消え去ってしまい、癌でいう完全緩解の形になる。
一人だけならともかくも連続して起こるこの事象・・・いったい何だったのか。


まずこのミステリの謎が、あったはずの癌がなくなっている!という、人の興味を引き付ける謎だ。
癌患者の担当者、夏目医師。
そして癌の研究者で夏目の友人である羽島。
この二人が中心になり、この謎を解いていく・・・
冒頭の部分で既にミステリがあって、ここである一つのミステリの仮説は消える。
あったはずの癌がなくなっている、というのだったらこれをまずミステリ的には考えるだろう。

読んでいて、ミステリの謎を解いていると同時に、癌そのものがどういう治療法があるのか、癌患者が民間療法に頼る気持ち、保険金の仕組み、鬱病患者が文学作品を残す理由、など他の部分にも読むべきところがあった。
ただ・・・夏目と羽島たち友人たち、との会話のやり取りがいかにも長い。
保険会社の森川、夏目の婚約者紗希、森川の同僚水嶋・・・
何度かこの会話があるのだが、誰が誰やら会話のトーンが一緒なので、女性男性の区別はつくものの、夏目と羽島の区別がつきにくくここが非常に読むのが難航した。
誰なんだろう?このしゃべっているのは。
誰なんだろう?この意見を言っているのは。
常に常にこれを考えながら読むってどうなのだろう。

またこの話、もう一つ、復讐劇のようなエピソードも入っていて、それにからんでラスト一行の驚きもある。
けれど、これまたどうなのだろう。
驚きはしたが・・・

肝心のなぜ癌患者が回復したのか、という謎解きも心地よい謎ときには私には思えなかったのだ。
これだったら悪意を持った医者が現実にいたら、いくらでも出来るではないか・・・いかに物語とはいえ。

以下ネタバレ
・生活に困ってお金が欲しい人と富裕層(つまり権力者)とにわけている。
1.生活に困っている人については
免疫抑制剤を投与した後、他人のがんを入れる。
癌は増殖する。→ここで末期がん診断をもらい、保険金をもらえる。
が。
いったんはこうして癌になるが免疫抑制剤の投与をやめれば、
癌は消滅。
(しかし免疫抑制剤を投与したことによって、本人の癌リスクが二倍になる危険性も同時にある。これを本人は一切知らない)

2.富裕層は、病院側が利用する人であり、薬の認可、またはアンダーグラウンドのあれこれができる人、など用途は様々だ。
癌を盾にの脅迫なのだ。
初期がんが見つかった権力者にまず普通の治療を。
そして切り取った癌から遺伝子操作で自殺装置を組み込んだがんを患者の体内に戻す。
ポナストレンAという昆虫のホルモンに似た化学物質が体内に入ると複数の自殺装置がオンになる仕組み(つまり癌が治る)
(これは、癌をもともと持っている人にしかできないことなので、1の生活に困っている人にこの方法は用いられることはない。
また逆に、1の免疫抑制剤の方法は、脅迫することでその人が他医療機関に移る恐れがある。
それでは癌がなくなってしまうのでこれまたできない。
両方がどちらか一方にしか有効ではないのだ。)

3.宇垣医師は、西條医師の娘だった。
精子提供の果ての子供だろう。
西條医師とともにいる、現在は。

4.西條医師は死んだと見せかけてたが、死んではいなかった。
死んだのは西條医師の妻の不倫相手。
(この不倫相手の子供が、西條医師の自殺した娘の父親なので、血液毛髪などから彼が父親、つまり西條医師と認定された)