2017.05.31 辺境図書館


『《この辺境図書館には、皆川博子館長が蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。知らない、読んだことがない、見つからない――。
そんなことはどうでもよろしい。読みたければ、世界をくまなく歩き、発見されたし。運良く手に入れられたら、未知の歓びを得られるだろう。(辺境図書館・司書)』


評価 5(とびぬけ)

連載当時から(早く単行本になーれ!)と念じていた本。
本当に素晴らしい本だ、美しい装幀も光る一冊だ。
辺境図書館と銘打って、皆川博子が図書館長という設定になっている。
広義ではブックガイドなのだろうが、そこは皆川博子なので、一筋縄ではいかない選書をしてくれている。
そこが大変魅力的だ。

皆川博子が耽溺した本ということで、沢山の(多くは私が未読の本)を出してくれている。
そのきらびやかなことと言ったらどうだろう。
夜のみだらな鳥、穴掘り男爵、建築家とアッシリアの皇帝などから始まる数々の海外の本たち・・・そしてその中には間宮緑や川村二郎という日本作家も組み入れられている。

皆川博子の語り口に魅せられどれもこれも読みたくなっていく。
内容に触れてるのはもちろんのこと、最後にこの本の成り立ち、作者の状況、来歴、のようなことも書いてあり、更に皆川ファンに嬉しいのは、「その本が皆川博子のどの本にどのように影響されているか」というのを解題しているところだ。そこはとても短い文章なのだが、(ああ・・これがこの作品の根底に流れるもの!)とちょっと感動してしまう。
夜のみだらな鳥では、冬の旅人、薔薇密室、結ぶに触れられている。
ミック・ジャクソンの穴掘り公爵は、タイトルそのものが猫舌男爵を触発している(なるほど!)

この中で、アンナ・カヴァンは全体に私も読んでいたのだが、皆川博子がどう読んでいるのか、というところが非常に面白かった。また黒い時計の旅も読んでいるが、これはネタバレに抵触しないようにとても気を使って皆川博子が書いているというのがよくわかってこれまた読み手のある文章だった。

『夜のみだらな鳥』とホセ・ドノソ/『穴掘り公爵』とミック・ジャクソン/『肉桂色の店』とブルーノ・シュルツ/『作者を探がす六人の登場人物』とルイジ・ピランデルロ/「建築家とアツシリアの皇帝」「迷路」とフェルナンド・アラバール/『無力な天使たち』とアントワーヌ・ヴォロディーヌ/「黄金仮面の王」とマルセル・シュオップ/『アサイラム・ピース』『氷』とアンナ・カヴァン/「曼珠沙華の」と野溝七生子/『夷狄を待ちながら』とジョン・マックスウェル・クッツェー・・・・などなど、魅力的な本が勢ぞろいしている。

最後に彼女の短編のプラスのおまけつき。
本当に読み甲斐のある一冊だ。