評価 5


とても面白く読んだ。
この対談集、騎士団長殺しを特に読んだ後だとさらに興味深く感じるだろう。
ここに対する言及が多いので、読んだばかりだと、あ!なるほど!と思うところが多かったからだ。
また別作品にも話が及んでいるので、そこもぐいぐい読めたのだった。

川上未映子のインタビューってどういう感じなのか知らなかったのだが、村上春樹の本を読みこんでの質問だし(よく勉強している!)、かといって過剰にのめり込みすぎてもいないし、もってまわったインタビューでもないし、決めつけもないし、このスタンスは好感が持てた。
村上春樹も答えやすかったと思う、このインタビューなら。
時に笑いながら(笑ったのは、プラトンのイデアなどを川上未映子が必死に読んできたのにという部分)読んだのだが、率直に知らないことは知らないと村上春樹も語っている。

彼の自分の作品を忘れているのも発言を忘れているのも、すごいことだなあと逆に思ったりした。
なんだかどちらが作者かわからなくなってるじゃないか!(それほど川上未映子は読み込んでいる)
毎日10枚のペースで書くということ
天職と自ら言っているということ
戯曲よりも何よりも小説が自分に会っているんだということ
そしていろいろなところで語られている、地下室のまた下の地下室の話(ここも川上未映子の絵が光る)のこと
特徴的な比喩の出方のこと(決して比喩帳があるわけではない・・・)
日本近代文学のこと
日本文壇のこと
どうやって世界に羽ばたいていったのかということ・・・・


村上春樹よくぞここまで語った、と思った。
これを読んで、もっと自由に村上春樹を読んでいいのだなあ・・・と改めて思ったのだった。
解釈はそれぞれ、受け止め方もそれぞれ、という単純なことを思い知ったのだった。
洞窟の中で語り部がとびっきり面白い物語を語る、それを純粋に楽しもうと思った。

騎士団長殺しで、まりえが主人公の男の人に、胸のことを相談するのが私は読んだ時に違和感があったのだが(思春期の娘が男の人に相談する?)、村上春樹の言葉ですごくここは落ちたのだった(244ページ)
いわく彼を男として見ていないと。
だからこそ二人の会話は内面的で思念的な会話になるのだと。
そしてまりえがそういう関係の持てる人をずうっと求めていたのだと。
12歳ぐらいの女の子が安心して胸のことを話せる相手、だと。

またまりえがワードローブに隠れている部分の話もとても興味深かった。
一体あれは何だろう?と思っていたから。