評価 4.6

ドメスティック・ノワール、というのがよく意味がわかったようなわからなかったような気がしていた。そして、裏のあらすじを見て、ママ友の軋轢の話?っぽく思っていたのだが、それはそうでもあり、全く違った側面もまたあった。
後半、真実がめくれていくにつれ、これってサスペンス要素のある話だなあと思ったのだった。
まさかこのようなことが陰で行われているとは。
途中で何度かハイスミスに言及したところがあり、実際に作品名も出てくるのだが、ハイスミスを意識して書いているなあ・・・と思う部分も多々あった。
一人の人間の裏の面がべろっと出てくるところがとても楽しめたのだった。

ステファニーのブログも巧みに使われている。
ブログの虚実もまたあらわになっている。
またママ同志の微妙なヒエラルキーも作用しているところも面白い(ここは日本と一緒)

シングルマザーのステファニーは、同じ幼稚園のママ友に親友ができた。
その名前はエミリー。
お互いの子供同士が仲良かったこともあるのだが急速に仲良くなった二人。
ある日、エミリーは息子をステファニーに預けたまま失踪する。
ステファニーから見れば、理想的な夫、潤沢な資産と美貌を持ったエミリーが子供を残して失踪するということ自体が意味が分からなかった・・・


そしてステファニーは自分のやっている育児ブログで、情報提供を呼びかけるのだ。
ブログの功罪がここで明らかになってくる。
ブログは書き方によれば、ある一定の人に向かってのメッセージにもなりえるのだ。

ステファニーの語りで進んでいく前半は、彼女の暗い過去もまた映し出している。
なぜ彼女がシングルマザーになったのか。
そして彼女の最大の秘密は何なのか。
そしてその最大の秘密の後の、更なる秘密とは何なのか。

一人の人間が出来上がるのは必ず彼女もしくは彼の過去があり、過去が人間を追ってくる。
それが如実に出た作品だった。

惜しいのは、最後だと思う。
最後、もうひとひねりがあっても良かった、こちら側の反撃とか。
あとエミリー側のある一つの秘密、は割合最初の方でわかる。
これはちょっと使い方が安直だと思う。

以下ネタバレ
・後半は失踪していたエミリーの告白になる。
エミリーと夫のディヴィッドは保険金目当ての犯罪を計画していた。
エミリーは死んでいなかった。
保険金を受け取ったら、ディヴィッドと海外に逃亡するつもりだった、息子を連れて。
それまでの間、息子を安全に生かしておいてくれる人が、わざと近づいた友達ステファニー。

しかしエミリーーが双子というのを知らなかったディヴィッドは、彼女のDNAが死体と一致したために、彼女が死んだと誤解する。
そしてステファニーと深い仲に。

代わりに死んだのが、エミリーの双子の妹(ドラッグで身を持ち崩している女)
この双子、というのは、最初の方で双子の絵がある家なので割合容易に想像がつく。

・エミリーを崇拝し、そして羨み、ついにはその座を乗っ取ったと思われるステファニー。
一見地味で(ここがブログを見ると非常に明るく張り切っている女性に見える)、普通のシングルマザーに見えたが、彼女は異母兄と密通していたという穢れた過去があった。
そしてそれを結婚後も続けていて、見破った夫は絶望して異母兄とともに車の事故で自殺したのだった。
これが最大のステファニーの過去。
さらにわかった過去が、ステファニーの今いる子供が、異母兄の子供、であるということだった。

・最後エミリーは、夫はどうでもいいので(ステファニーと密通しているし)、息子のみ取り戻したいと思う。
そして息子の幼稚園に遠くから顔を出し、息子に合図を送る。
息子は、食事の席でママに会ったと言って、ステファニーたちを戸惑わせる。
ほどなくエミリーはステファニーの前にも現れ、彼女は死んでいないんだということを確信するに至る・・・

保険会社のプラガーがやってきて、保険金のことで調査し始めたので、エミリーの誘いに乗ってステファニーはエミリーの夫に罪を擦り付ける車殺人を共にすることになる。
プラガー死亡。
そこにあった指輪から警察はエミリーに事情を聴きに来るが、巧みにエミリーはステファニーに話を誘導する。
そして警察はステファニーに。

エミリーは高跳びの用意をする、愛する息子とともに。

・・このラスト、ステファニーがもう一回、反撃すればいいのに、と思った。