評価 4.8

長い・・・辛い・・・
長いが割合すらすら読めた。

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これはレーガンが大統領に選出された1980年の出来事だ。
モンタナ州の小さな山あいの町で、妻子と別居中のピートはソーシャルワーカーをしている。
彼自身の家庭にもまた問題があるのだが・・・。
そして彼は保護された11歳の少年ベンジャミンと出会う。


この主人公のピートの悲惨な人生と言ったらどうだろう。
妻子は別居中(しかも子供を目の中に入れても痛くないほど愛しているのに)、弟は服役を繰り返しいまや逃亡中、ピートがやっている仕事と言えば、ストレスたまりまくりのソーシャルワーカーだ。
このソーシャルワーカー業がまた強者揃いの相手であり、暴力振るうものあり、狂信者あり、子供に虐待をする者あり、と困った人のオンパレードだ。
特に終末論に傾いている頭のおかしいと見えるジェレマイア・パールとの交流は命懸けだ、何しろかっとすると相手は銃を持っているのだから。
しかしパールの息子ベンジャミンは、体は汚れてはいても無垢な心を持っていて、登校も出来ない状態なのだが、学校にあこがれを持っているようでピートを慕ってくれている。なんとかこの親子を真っ当にしたい・・・ピートの心も何度も挫折する。
また、何度も何度も助けの手を伸ばしても脱走してしまう問題児セシルの気持ちの中に何があったのか。彼のシングルマザーの元に戻すのは何か問題があるのか、そして彼の妹ケイティを救うのにはそうしたらいいのか、ピートは煩悶する。
ソーシャルワーカーの仕事の間に殴られるということは日常茶飯事で、しかも後半、今度はいわれのなき嫌疑で警官にまでめちゃくちゃにされている・・・何とも可哀想なピート。
もしかして彼自身が自分を罰しているのか、と思うほどの人生であり、仕事である。

ピート自身の家庭にも問題があるのが徐々にわかってくる。
特に妻が不倫をしたということで女性全般への不信感が高まるピートの姿が痛ましい。
また、娘のレイチェルは妻が引っ越してからも飲酒と乱交が止まらなく、家に不特定多数の男性や女性が出入りしているいわゆる問題家庭で過ごすことになる、そして、レイチェルの家出・・・
まさに娘が言うように、人の家を見ている場合ではなくピートは自分の家が仕事でお世話している家と全くかそれ以上の相似形を見せていることに気づくのだった。

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レイチェルが第二の自分を作ってローズと名付け、客観的にレイチェルを見ているという構図のやり取り(おそらくソーシャルワーカーか、医療関係者かとのやり取り)が胸に刺さる。
徐々に堕ちていくレイチェル。
何度もお父さんに連絡という選択肢があったのにそれを使わないレイチェルの姿がまたここに浮き彫りにされている。

ラストが非常に辛い。
何らかの救いが欲しかった、ピート自身に対して。レイチェルに対して。
けれど、ここに一抹の救いを求めるとすれば、見守っているケイティと、最後にすり寄ってきたベンジャミンの姿だろうか。

謎が一つあった。それは予測されたいたこととはいえ、パールの奥さんの行方と子供たちの行方だった。
ベンジャミンを除く他の子供たちが4人もいたということに、ピートは後半自分の家で娘を探す旅に出た時に奥さんの実家に行って気づくのだった・・・そしてそれはまた一つの悲劇でもあった・・・