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評価 4.9

相変わらず変な話だ!(褒めてます)
そして舌にざらつきを残すような話で心に引っかかりを残す。
今村夏子の作品を読むと、必ず何かが引っかかる、そしてその引っ掛かりは、もしかして自分も夢の中とかで感じていたものだったのではないか、ちょっとした瞬間にふっと思ってしまったことだったのではないか、という錯覚に近い物すら感じるのだ。
異世界とかではないのだが、ちょっとした日常から違う世界をこっそり覗き見る、そういう気持ちがする作品だった。

むらさきのスカートの女、の奇妙な人間がいる。
髪の毛もばさばさで身なりに構っていなくて、クリームパンを公園でもそもそと食べるような女。
定職についていないでふらふらと一時雇いの仕事で糊口をしのいでいる女。
公園にいると子供にすら馬鹿にされる女。
近所の人にも敬遠されている女。
ところがこの女がある時に職を得て・・・


この話の面白さは、むらさきのスカートの女、としか繰り返し書いていないけれど、この人のことを語っている『黄色いカーディガンの女』がいる、ということだ。
ねじくれた関係の二人。
正常な目で見ると、黄色いカーディガンの女は、むらさきのスカートの女のストーカーでもある。
何でこの人はこんなに知っているのか!むらさきのスカートの女を。
でもストーカーというにはあまりに接触がない。
ただただ彼女を蟻の観察のように観察しているだけだ。
彼女の想像の部分、彼女の妄想の部分もここにあるのだ。
しかもむらさきのスカートの女に固執するあまり、突っ込んでいった先の店のガラスまで割って弁償する羽目に陥るのが黄色いカーディガンの女だ。
髪の毛を洗ってほしいという思いから、試供品のシャンプーをむらさきのスカートの女の家のとってにぶら下げておくのも彼女だ。(このあと髪から漂う匂いの説明が何度もある、ここも執着か・・・)
また、むらさきのスカートの女の行く公園のベンチは一定なのだが、そこに座ったサラリーマンをこれから人が来ると追い出すまでの行動力もある、普段おとなしそうな人なのに、黄色いカーディガンの女は。
いったいこの執着とは・・・

そしてむらさきのスカートの女に求人雑誌をさりげなく提示し、自分の職場(ホテルの掃除の従業員)に誘い込むことに成功する。
そこでも黄色いカーディガンの女の観察は続く。

むらさきのスカートの女はこの職場で意外にも適応力を発揮し、変貌を遂げる。
職場の人と打ち解け、仕事を任され生き生きとし始め美しくなり、そして公園で子供達との友好関係まで作っていく。

・・・・・
むらさきのスカートの女、にも、黄色いカーディガンの女にもそれぞれ名前は出てくる。
けれどこの話の中で一般的な名前、呼称がどんなに関係ない事か。
最初読んでいると、むらさきのスカートの女が圧倒的に病的で変な人間に見える。
ところが途中から(働くあたりから)、変なのは見ている黄色いカーディガンの女であり、彼女の病的資質が透けて見えてくるのが恐ろしい。

ラストに続く流れのところで一方的な黄色いカーディガンの女の思いが炸裂する。
そして暗転・・・・

そしてラスト!
面白い大変面白い、このラスト一行が。


以下ネタバレ

・職場の上司と不倫関係になったむらさきのスカートの女。
そして職場の備品を盗んで小学校のバザーで出していたと疑いをかけられた女。
(これは黄色いカーディガンの女だろう、やったのは。
最初の方に書いてあるのだから、バザーで売っていると)

上司がアパートまで来た時に振り落としてしまう。
死亡したと黄色いカーディガンの女が宣告し、むらさきのスカートの女に逃げろと指示する、自分も後から追いかけるからと言って。
ところが。

黄色いカーディガンの女の総ての財産をもって、むらさきのスカートの女は逃走。
上司は怪我はしていたが結果死んではいなかった。
むらさきのスカートの女の上司に対するストーカーという事で一件落着させようとしていた。

・・・・
・そして公園のベンチに行ってクリームパンを食べる女が、黄色いカーディガンの女。
つまり最後、

むらさきのスカートの女、と黄色いカーディガンの女が重なる。
黄色いカーディガンの女がむらさきのスカートの女に取り替わっているのだ(ここが面白い)