腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫 も 48-1)腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫 も 48-1)
(2007/05/15)
本谷 有希子

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評価 4.9

自分は特別だ特別だ、と勘違いし続ける女、澄伽。
彼女は劇団に入って女優になるために東京に出て行った。
ところが両親の訃報で急遽里帰りをする。
そこは田舎で過去の想い出と家族がいる場所であった・・・・

この勘違い女澄伽の造型が漫画的だ。
デフォルメされた自意識過剰の女だ。
こんな女がいるはずもない、と思いつつ、話が面白いのでどんどん読み進める。
文通欄で毎日文通してくれる男性を見つけるのもイタイことならば、自分に才能があると思うあまりに高校時代の演劇での皆の失笑の反応を自分は天才女優だから理解してもらえないと思うのもイタイ。
イタイ人間はいかにして出来上がったか。
それが家族の物語ともつながっている。

家族は
兄がいて、妹がいて。
兄嫁がいて。
兄嫁は施設で育って愛に飢えている。だから兄の暴言暴力に耐えるし、エジプトに行けと唐突に言われればそのまま行ってしまう人間だ。
妹は何かをしたらしい。
でもこれはかなりあとまで隠されている。
ここがミステリのようで大変面白かった箇所だ。
また兄と澄伽との関係もいまひとつ最初の方ではわからないが徐々にここも開いていく、その開き方が面白い。

妹への強烈な復讐。
そして妹からの一撃。
このあたり読み込んでいくとわくわくするものがあった。
ただ、これって、小説にはなっているが、全体に劇だと思った。そこは大変強く思った。だからといって小説が下手とかそういうことではないのだけれど。

前に読んだ偏路の『都会で夢破れ田舎に戻ってきた演劇少女』というのをこの腑抜け〜と続けて呼んでみるとまた違った味わいがあるだろう。

佐藤江梨子が映画をやったそうで見ていないが、佐藤江梨子の配役合ってると思った。

以下ネタバレ
・高校時代にこの姉のこと、兄の額の傷のこと(澄伽が傷つけた)を漫画にして賞を取ったのは妹。それが村中の人に読まれて、澄伽はいたたまれなくなる。
・兄と澄伽は血がつながっていない。そして肉体関係を持っている。
・兄が死ぬと言うのがラストに出てきて大変驚いた。
・手紙をやり取りしていると思わせてそこに妹が介入しているとは!