評価 4.6

たまに角田光代のエッセイを読んでみたくなる。
彼女の好奇心に満ちた日常とか、彼女の老い(と言ってもまだ若いけれど)を見つめる話とか、体重の話とか。
ぎっくり腰、老眼、白髪、乾燥肌、更年期などと向き合っている彼女の等身大の姿が手に取るようにわかる。

日常のふわっとした話だけれど、そこには確実に角田光代がいて、ああ・・同じだなあ、とかここは違うなあ・・・と友達感覚で読めるのだ。
このふわふわ日常からどうやってあの鋭い小説群が生まれてくるか、というのは謎であるけれど。



評価 4.9

短歌にさほど興味がないのに読んだのは、作者が穂村弘だったからだ。
そして読んでとても面白かった。
この本、画期的ではないか。

というのも、何かの文章があってそれを『添削していい文章にする』、こちらの方がいいですよね、というのはよくある。
それがどちらかというと普通だ。
でもこの本は、逆で『改悪例』を出して、前の短歌と比べてほら悪くなったでしょだから前の短歌はこういうところが優れているんですよ、という実に説得力のある説明が並んでいる。

大仏の前で並んで写真撮るわたしたちってかわいい大きさ(元の歌)
大仏の前で並んで写真撮るわたしたちってとても小さい(改悪例)


灯の下に消しゴムのかすを集めつつ冬の雷短きを聞く(元の歌・河野裕子)
灯の下の文字に消しゴムをかけながら冬の雷短きを聞く(改悪例)
灯の下に鉛筆の文字を記しつつ冬の雷短きを聞く(改悪例)


改悪例では、誰もが普通に考えそうな短歌の言葉選びが載っている。
ああ・・・わたしでもこちらの言葉を選びそうだ、というような一般的な言葉が並んでいる。
でもぐいっと人の心に刺さる、人の心に残る短歌というのは、ある言葉選びが非常に大事なんだなあという事がよく分かったのだった。
共感より、驚異。自由な表現とは何か。
そこまで考えさせてくれる短歌入門の本であった。
2018.05.19 路上のX



評価 4.9

息を詰めるように読み続けた続けた続けた・・・
やっぱり読ませる力がある人なんだと思う、桐生夏生は。
これは女子高生たちのJKビジネスに入り込んだ話だ。

なぜ女子高生がそこに至ったのか。
中には単純にお金が欲しいという女子高生もいるだろう。
怪しげな一緒に歩くだけの散歩、個室での会話、そこには性的サービスはない、とされている。
けれどどう考えても普通の目で見れば、ここに何らかの裏があるということは容易に想像がつくだろう。

JKビジネスの首謀者
その片棒を担ぐ人たち
そもそもJKビジネスにお金を払う男達
そしてJKビジネスに身を落とす女子高生たち・・・
これらが絡み合って一つの物語になっている。

・・・
貧困の連鎖、ということを考えた。
ここにいる女子高生達は、行き場がない。
なぜ行き場がないかというと肝心の家庭が崩壊しているからだ。
それは、
・両親が離婚して親戚に預けられ居場所がない子、
・再婚した母の新しい夫に性暴力を振るわれ帰りたくない子
・家で全く居場所がない子
この子達が、さあ外に出て普通に生きていきましょうと思っても全く手がかりすらないのだ。
お金がなければ何もできない。
しかも。
貧困であるという事は、貧困じゃないためにはどうするかというノウハウをまた持ち合わせていないという事だ。
この中で、途中まではいわゆる普通の家庭に育った真由が驚くことの一つに、ペットボトルの飲み物がある。
これをお金がないのに買う女子たち・・・
普通に育っていれば、麦茶のパックを買って水と入れ物さえあればずうっと安上がりにできるという普通のことをこの子たちは知らない。
ご飯も、普通に中古であっても炊飯器で炊いた方がたくさん食べられるという事を知らない。
だが、炊飯器で炊くためには、『家』が必要になる。
麦茶パックを作るにもしても『家』がある程度必要になる。
だから彼女たちの居場所、家を求めて、一人の男子学生を監禁する場面というのは実に実にわかるのだ。
あそこで、彼女たちは居場所を見つけている。
けれど、その居場所を有効に使うノウハウは全く持ち合わせていない(だからご飯とか炊けないし、麦茶も作れない)
この監禁場面、同作者のOUTを思った。
もしかしてこの子たち、やってしまうのではないかと思ったりした。
そこまで追い詰められた状況なのだ。

普通に育った真由は、自分が意味なく預けられた親戚の家の惨状に目を覆う。
そこには彼女を気にかけてくれる人など一人もいなくて、居候扱いで炊飯器でご飯もろくに炊いていない(ここもまた象徴的にご飯が出てくる)
ここもまた貧困がやや覆っている家なのだ。
そしてバイトをしている先で大人たちの思惑にはまり、真由は自分の貞操を失ってしまう・・・

真由がどういう形であれ、友達というのを持つことができた場面には、なにかしらほっとした。
彼女リオナは自分がしているのにもかかわらず、真由はJKビジネスに類することは出来ないだろう、ときちっと話してくれる。
リオナもまた悲惨な生い立ちで行き場のない女子高生だった。

この話、貧困の連鎖、も描いているけれど、根底に流れるものは、性差別なのだろう。
春を売る若い女の子たちに群がる男達。
もしこの人たちがいなければ、これは起こらないことなのだだから。
自分よりずうっと年下の女子高生がなぜ自分に恋愛感情を持ってくれると勘違いするのだろう。
ここがまさに性差別であり、自分がお金を持っているから自由にしていいと思い込んでいる醜い大人の欲望が渦を巻いている。

・・・・
この話、ラストで『真由の両親が夜逃げした後にどうなったのか?夜逃げは本当だったのか?』に対しての苦い煮貝答えが出てくる。
そこで真由は激怒し涙する。
この気持ちが痛いほどに突き刺さってわかったのだった。
母親が幸せを掴もうとする気持ちはわかるが、だからと言って前の子供は放置なのか。
自分さえ幸せだったらよいのか。
というか、それで幸せを感じられるのか。

ラスト、光明が見えるラストだ。
このあと、もぜひ読みたい。
そして次があるとするならば、真由側だけではなく、彼女たちと交際しようとする男性側、真由の両親側の話をたっぷり書いていただきたい、東大の大学生の男子の心の内も。
そこがやや、物足りないと思った箇所だったから。

2018.05.19 目覚め
目覚め

評価 4.9

今の目から言えば、フェニミズム文学とジェンダー論を結びつくという事なのだろう。
まだ結婚という事しか生きる術がほぼなかった時代の話であり、因習の残っている時代であり、当時としては非難の的になるような小説、というのもわかる気がする(1899年に出版)

本の紹介によれば
『人妻の姦通と自殺を描き、出版当初酷評されながら、60年代フェミニズム運動の中で再評価されたショパンの問題作』
となっている。
すぐさまボヴァリー夫人とか人形の家とかを思ってしまう。

・・・・
ただ、この話、ストーリーもさることながら、描写が美しい。
非常に抒情的なところがあり繊細であり、海の場面で始まり海の場面で終わるという趣向もなかなか考えられている。
またファンタジーの要素もふんだんに入れられていて一種のおとぎ話を読むような場面もあるのだ。

不倫の話といったらちょっと汚くなるだろうと予想するのだが、それがずうっと美しいままで終わっている。
よくわからないままに結婚、子供ができる、夫頼みの経済で上流生活を楽しむ、自我がない、自分がよくわからない、と今の目から言えば、け!!!差別だ!!と言われそうなことばかりだ。
そしてこの人妻エドナが反逆するのも実に可愛らしい。
すぐに不倫をするわけではない。
そもそも恋の感情になれていないから、そこから始まるうぶなところがある。
自分がなんだかおかしい、変だわ、と思いはじめ、夫に従順な自分の友達の美しさを見ながら(でもこの人は本当に幸せなのか)と自問自答し、更に自分はどうなのか話しながら確かめていく、みたいな手探り状態なのだ。

周りの人はお医者さん、貞淑な妻(これがまた美しいが全く面白みのない女)が、いさめようとするのだ、夫から逃れようとする人妻エドナに。
それは世間的には真っ当な意見だが、エドナにとっては余計なお世話にしかならない。

そして結局一番大好きなロバートとは結局プラトニックっで終わり、女たらしで名高い男と密通してしまうという場面になだれ込む。
最初が印象的な海で始まりここでエドナは自分に目覚める、そしてラスト海に向かって生まれたままの姿で泳いでいく自死の場面が、くっきりと脳裏に焼き付くのだ。



評価 4.8

思い描いていたよりずうっと良い作品だった。
方言(この場合東北)が巧く機能しているし、話そのものも面白く読ませる。
途中で方言の塊が沢山飛び込んでくるが、それがリズム感をもってこちらに伝わってくる。
徐々に彼女の生い立ちが語られていくのもまた読ませる。

子供たち二人を育て終え、夫に先立たれた桃子。
彼女の頭の中には誰だかわからない人が沢山出てくる、それも生まれ育った東北の方言を使って話しかけてくる。
生きること、それは彼女にとって孤独と向き合う事。
いい思い出もあったし、辛い思いでもあった人生。
そこを彼女は生き抜いていく・・・


東北で何の不思議もなく、おら、と自分のことを読んでいた少女。
彼女が学校で始めて自分をわたし、という事を知り、それを使ってみたいが周りとの違和感を感じるあたり、含羞を感じるあたりの描写が非常にストレートに伝わってきた。
また子供達との関係性も徐々に語られていくけれど、それは同時に自分と母との関係に及び、ひいては自分の結婚式の直前に田舎を逃げるようにして都会に来て最初の夫と知り合った経緯を語ることでもある。
夫とのやり取りも何とも微笑ましく、恥じらいがあって初々しい。

後半、桃子さん自身の過去の自分が次々にひょこっと登場してくるのもまた幻想的で良かった。

第158回芥川賞受賞。



評価 4.1

自分の学生時代に、これと全く同じことがなかったとしても、(ああ・・・あったなあ・・・こういう心のすれ違いみたいのは)と思わせる一冊だった。
どこもかしこも懐かしいのだ、学生時代のモラトリアムの時代に自分が思ったこと、将来への漠然とした不安とそして夢、対人関係、その全てがきゅっと凝縮されている。
まさにタイトル通りの、青くて痛くて脆い、の話だ。

・・・・・・・・・・・・・

男子学生が語り手になっているので、そこがやや私としてはもどかしかった。
なぜかというと、この男子学生がなんとも歯痒いのだ。
もうちょっとなんとかしてくれ!と思うような男子学生なのだ。
彼の思考回路というのが今一つ納得できないし、後半に至ると、なんでそれをそこまで?、と思うこと多いのだ。
このあたり、共感する人と共感できない私のような人間とに分かれるだろう。
ここが青くて痛くて脆い、ところなのだろうか?
現実を見て秋好が自分の道を進んでいるのはそれはそれでいいんじゃないのか?
私にはそう思えて仕方なかったのだった。

入学したてから人とそれほどかかわりを持たない方針を打ち立てている『僕』に、積極的にかかわってくる一人の目立つ女子生徒。
目立つ女子生徒、秋好は、目立つと同時に理想論を授業でぶちまけ、周りから浮いていた。
そんな彼女に目を付けられ一つのサークルを結成した大学生男子。
そのサークル名はモアイ。
しかしモアイは時とともに違うものになっていく・・・


途中まであることが伏せられている。
そこでかなりの人が驚くとは思うのだが・・・

以下ネタバレ

・秋好が途中まで死んだ、と思っている。
ところが、彼女は巨大な就活セミナーのようなものになったサークルモアイの代表者だという事がわかる。

・細々と始めたモアイ。
しかし徐々に形を変えて、最終的サークルモアイに入ることは就活に勝つこと。
そしてモアイのメンバーは学内でも大きな幅をきかせている。
4年の間にそういう事になっていたモアイから『僕』は脱退しているのだが、最後の方で、モアイを解体すべくネットに投下するのだ、モアイの実情を。
この部分が何ともかんとも・・・私には納得できなかった。

 『僕』の私怨の気もするし、また、最後の秋好とのやり取りもなんともかんとも・・・
2018.05.17 5月ベスト本


今月特に特に面白かった本は雪の階。
奥泉光のいいところがぎゅっと詰まった本。
『ある事件』の前夜の貴族の女性のあれこれと、闊達に動く庶民の女子の恋の顛末がいきいきとした語り口で語られて行きます。

ミステリ性あり、幻想風味あり、何よりもくすっと笑える場面あり、で、隅から隅まで楽しめました。
出来得るならば、こののち、を描いてほしいというのが切なる希望です。

・・・・・・・
あともう一冊、は・・・
一冊というかこの中の一編の表題作、とてもヒットしました私の心の中に。
忘れられない一作でした。
今まで読んだ川上作品の中で私としてはベスト。

一見平凡、でもちょっと困ったことも散見する・・・、ぐらいに始まる主婦の普通の日常世界がみるみる変容・・・
変容っぷりが素晴らしいです。
作者の作品がこういうのだったらいくらでも読みますっ!!ついていきますっ!

4月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:3346
ナイス数:295

ウィステリアと三人の女たちウィステリアと三人の女たち感想
4作品入ったこの川上作品、好きです。表題作が一番心に残りました。ちょっと村上春樹のワールドを思い出しました。平凡な主婦が自分の家の前が解体されるのを見ているところから始まるのですが、どんどん不思議な方向に話が転がっていくのです、この転がり具合が文章内容ともにお見事。冒頭の『彼女と彼女の記憶について』も、同窓会に出た女優の忘れていた親友の話がなんとも強烈な形でよみがえってくるところが読んでいてぞくっとしました。
読了日:04月23日 著者:川上 未映子
口笛の上手な白雪姫口笛の上手な白雪姫感想
届く人に届きますように。
読了日:04月23日 著者:小川 洋子
絶景本棚絶景本棚感想
人様の本棚を見るのは本当に楽しいことです。この本、その欲を満たしてくれています、しかも掲載当時はよくわからなかった書名がわかるようにしてくれているので、どの人の本棚が好みかなあ・・・とか楽しくパラパラ見ていました。新井素子さんの本棚(図書館みたい)にトンボソのおひめさまがあったのは嬉しいし(私も大好きでした)、川出正樹さんのミステリ系本棚も心浮き立つし、祖父江慎さんの八犬伝、坊ちゃんのバージョン違いなど、見るところ見るところ楽しいものが多かったです。
読了日:04月23日 著者:
乗客ナンバー23の消失乗客ナンバー23の消失感想
この人の既訳作品の中では一番好きかも。豪華客船の中というのが密室状態で魅力的だし、何よりもここに乗り込む男性の妻子がかつて同じ船で不明という出だしが何とも心躍らされます、彼が誰に呼び出されたかという興味とともに。また、もう一つの物語も語られていて密室の中の女性はいったいなぜどこに閉じ込められているのか、そもそも誰なのかという謎も加わり、そこに客船そのものの謎も・・・最後驚きのつるべ打ちでした。ただ・・・全くの私の感想、ですがややこのつるべ打ちの部分が軽い感じが。スピーディーな展開が好みかどうかが分かれ目。
読了日:04月23日 著者:セバスチャン フィツェック
銀河鉄道の父銀河鉄道の父感想
(宮沢賢治の評伝っぽい小説?)と思いながら読み始めたのですが、読んでみると読ませる小説で非常に面白く読みました。賢治にもし興味がなくても、この父親像というのに引き込まれます。自分は質屋で裕福な暮らしを作り出している父、彼が見る賢治像というのは父親の目、なので甘いところも沢山あるのですが(過保護です)、冷静なのです、あくまで。賢治の突拍子もない商売を始めようとしている時にも適切なアドバイスを。また幼少時病気の時の父の献身ぶりにも泣けました。大切に思っていた賢治、彼は時代を越えて愛された存在になったのです。
読了日:04月23日 著者:門井 慶喜
樽とタタン樽とタタン感想
ぱっと消えてぴっと入るが良かったかなあ。ほのぼのとした昭和の喫茶店の話。ノスタルジックでセピア色の話なのですが、ほのぼのと思いきや意外に鋭い文章もそこここに挟み込まれていました。町内会の草野球チームは、こういう男の人、昭和にいたいた!とふくっと笑ってました。
読了日:04月23日 著者:中島 京子
新美南吉童話集 (岩波文庫)新美南吉童話集 (岩波文庫)感想
懐かしいお話と、知らないお話もたくさん入っていました。棟方志功の版画入りなのでそういうところでもじっくり絵を見ながら楽しめました。時代が時代なので、戦争と言って日露戦争が普通に出てくるという話が多く見られました。ごん狐はラストがとても良い、語りつくしていないところが美しいなあと思いました。手袋を買いには同じ狐の話ですが、この中で姿の見えない人間の心の美しさが垣間見え、また母親と子狐の深い会話が胸にしみます。牛をつないだ椿の木も泣けました、人のためにいう無垢な気持ちに触れた感じで。心に寄り添ってくれる童話。
読了日:04月23日 著者:新美 南吉
雪の階 (単行本)雪の階 (単行本)感想
面白い!最初からしばらくは文章のリズムと世界観になじめなかったのですが、途中から一気呵成に。ミステリで恋愛小説でスパイ小説で幻想部分もまた。読んでいる間の楽しさと言ったら!昭和10年の春のドイツから来たピアニストの演奏会から始まり、伯爵令嬢惟佐子の友人が失踪し心中事件に発展し・・・。惟佐子の知り合いの千代子、記者の蔵原、惟佐子の両親、実兄(最後驚いた!)俗物の笹宮伯爵、つむじの結婚相手、など多彩な人物登場。現実の千代子が楽しい造型で(よく食べる!)可愛らしく、惟佐子は不思議な持ち味のあちら側の人間・・・
読了日:04月12日 著者:奥泉 光
シリアの秘密図書館 (瓦礫から取り出した本で図書館を作った人々)シリアの秘密図書館 (瓦礫から取り出した本で図書館を作った人々)感想
今現在も続いているというか、進行形であるシリア情勢。この本は、シリアのダマスカスの近くにあるダラヤという町の記録です。現地には行けないのでとぎれとぎれのネットでやり取りして若者たちの行動を記録するというノンフィクションでした。弾圧された彼らの生の生活、表面に最初は出てこないのに途中で署名入りのメールをくれた女性たちの悲痛な叫び、当時のオランド大統領に宛てた手紙の数々、若者達の希望。図書館は瓦礫の中から引きずり出した本で成っているのですが、図書館の話のみならず町の行く末がひしひしとこちらに伝わってきました。
読了日:04月12日 著者:デルフィーヌ・ミヌーイ
殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)感想
面白く読みました。「自分は殺人をかつて何度もした」と独り思っているキム老人。娘のウニと静かな生活をしていますがある日自分がアルツハイマーになり、記憶が抜け落ちていくことに気づくのです。なんとか自分をこの世界に引き留めたいキム。内省部分が非常に読ませます。同時に、近所でまた起こり始めた殺人事件の犯人がウニの恋人として現れ、気を揉み、、、、という話と思いきや!!!途中でええっ。内省的な思弁的なキム老人の考えを読んでいて、ある部分に来て、盤石な地面が揺らぐ感じがしました。一体何が本当で何が起こったのか・・・
読了日:04月03日 著者:キム ヨンハ
パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
ドラマ化に合わせて再読。マープルものではありますが、この話のメインは探偵役になるルーシーの機敏さ、聡明さ、闊達さにあると思いました。『列車同士がすれ違う時に片方の列車で女性を絞め殺している男の姿が目撃される、別の列車に乗っている老婦人から』という魅力的な出だしで始まります。そして、このミステリ、犯人が誰かということもですが、殺された被害者女性が誰か最後まで誰だかわからない、というところが面白いと思いました。そして最後のルーシーの決断!さてどちらだったのでしょう・・・私はあちらであってほしいと思いました。
読了日:04月03日 著者:アガサ クリスティー

読書メーター


評価 4.9

川上未映子作品の中で、これは好きな方だと思った。
どの話も心に残るし、どこかしら心に引っ掛けのフックのようなものを残してくれる。
どの話も巧いなあ・・・と素直に思えた。
4作品入っている。

表題作ウィステリアと三人の女たちが一番良い。
何かを連想させるなあ・・・と思っていて考えていたのだが、村上春樹の何かを想起させるような感じの話だ。
普通の子供がいない主婦がいて、普通に日常を送っているのに、ある日突然目の前の家が解体される。
そこには老婆が住んでいたらしい。
夫との仲もそれほどではなくなっていた29歳の彼女は、ある一人の女性にそそのかされるようにして解体の家に入っていくのだ・・・そこで彼女が見たものは・・・・

異世界というほど異世界ではないのだが、確実にそこで彼女は変容し、また世界も彼女の周辺で変わっていく。
徐々にその真っ暗な闇に取り込まれいていくその感じがとても良いし、そこから抜け出て現実に戻った時に、夫と再び会い彼の現実の言葉を聞く場面も読んでいて面白い。
ウィステリアの出方も非常に読ませる。

・・・・・・・・・・・・・・

彼女と彼女の記憶について、も、有名な女優になった女性が同窓会に出席したところから話が始まる、
彼女が忘れていた、かつて友達にしたこと。そして今のその友達の消息も恐るべき事態として語られていく。
一体何が友達にあったのだろう・・・
ちょっとした記憶があるかないか。
そこに悪気があるわけではないけれど、してしまったことの数々はどういう意味を人生で持ったのだろう。
そういうこと全てが開かれていく時、戦慄を禁じ得ない。


評価 4.6

8編の短編が入っている小説だ。
もうこれでもか、というくらいに小川洋子の独特なワールドが詰め込まれている。
静謐な物語、の数々・・・・が広がっている。
荒唐無稽な話、と言ってもいいだろう。

きっと届く人には届くのだろう・・・・
今回、私にはあまり響いてこなかったのだった、申し訳ない。

・・・・・
作家にストーカーのように迫っていく仮名の作家は怖かった。
段々おかしくなっていく作家のファンの気持ちと行動がちぐはぐになっていくところ、が読んでいて薄気味悪く、最後断罪されるところもやっぱりと思いつつもぞくっとした。

一つの歌を分け合う、は一番好きで、レ・ミゼラブルが全編にわたって書かれている。
自分の大切な息子を失った叔母。
彼女が自分の息子が出ている、と言い張ってレ・ミゼラブルを見ていたあの日。
これが遠い過去になっていて、今はもう今の自分がそれを思い返しながらレ・ミゼラブルを見ているという設定が読ませるのだ。

乳歯、は、海外の美術館で迷子になった子供時代の回想の話。
聖遺物との絡みで、最後乳歯が出てくるのが印象的だ。

かわいそうなこと、は自分の中でかわいそうなこと、を決めている子供の話だ。
彼が、少年野球を見ていて、補欠で出番の少ない少年に思いを馳せる場面が忘れ難い。

先回りローバ/亡き王女のための刺繍/かわいそうなこと/一つの歌を分け合う/乳歯/仮名の作家/盲腸線の秘密/口笛の上手な白雪姫